スズキサトシ(@sasa_rhythm)です!
アメリカの歴史と切っても切り離せないのが、黒人差別・奴隷制の歴史。
いわゆるアフリカ系アメリカ人という方たちの祖先は、アメリカ南部の労働力としてアフリカから連れ去られて来たという過去があります。
また当サイトは音楽のブログですが、「なぜ黒人差別の映画を紹介するの?」と思う人もいると思います。
しかし音楽の歴史とアメリカ黒人の歴史というは密接に結びついており、奴隷という終わりの見えない苦しみの中で産み出されたブルースという音楽が無ければ、現代音楽は無かったと言っても過言では無いのです。
詳しくはこちらのブルース映画の記事を参考にどうぞ。
『本物の叫び』おすすめのブルース映画そして、黒人差別・奴隷の歴史はタブーとされがちだからこそ、真実を伝えたいと思う熱い思いにより、このような題材の映画は数多く作られてきました。
生々しい描写に見るに辛い映画も多くありますが、過去を正しく認識するために、ぜひ見るべき映画を紹介していきます。
なお、映画を作中の時代設定別に分類してますので、興味がある時代を選んで見ることもできますので、ぜひ参考にどうぞ。
黒人差別・奴隷制を扱った映画
黒人奴隷制全盛時代(19世紀以前)
マンディンゴ
得てして黒人差別を描いた映画は衝撃的なものが多いですが、その中でも本作は群を抜いています。
アメリカ南部の大規模農場において、黒人奴隷がどのような扱いを受けていたかが鮮明に分かる内容。
物語としても一級品で、愛と憎悪にまみれた人間模様が、通常の映画では避けがちな汚い部分を細かに描いていると思うところ。
ラスト30分くらいは瞬きする間も無く物語に惹き込まれ、俳優の高い演技も相まって緊迫感を自分事のように感じましたね。
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それでも夜は明ける
1841年にワシントンで誘拐され、奴隷として売られた自由黒人『ソロモン・ノーサップ』の自伝を元に作られた伝記映画。
幸せな日々から一転地獄のような12年間を過ごす日々を描き、目を覆いたくなるようなシーンも山ほど。
現代の自由に生きられる人間がどれだけ幸せか痛感する良作です。
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ルーツ
映画ではなくいわゆる海外ドラマですが、グイグイと惹き込まれる素晴らしい作品なので紹介。
1977年制作と古いものの、アメリカで社会現象まで引き起こした人気ドラマで、今見ても全く色褪せません。
アフリカ系アメリカ人作家『アレックス・ヘイリー』の先祖の実話に、脚色を施した同名小説を映像化したもの。
黒人差別を扱った映像作品はいくつかありますが、本作はドラマということもあり細かな描写が特徴で、黒人がどのように奴隷として扱われていたのかが体系的によく分かります。
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ジャンゴ 繋がれざる者
物語としてはめちゃくちゃ面白かったのですが、黒人差別を描いた映画というよりは、西部劇的なニュアンスの入った創作映画。
上記までで紹介して来た、史実を忠実に描いてる映画を見た後だと、黒人であるジャンゴが白人を次々と撃つシーンは痛快そのもの。
しかし劇中歌でラップが入るのが超絶な違和感で、黒人映画だったらブルースだろうと強く思ったところ。
純粋にストーリーを楽しんで見るのがいいですね。
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ヤコペッティの残酷大陸
モンド映画(猟奇的ドキュメンタリー)というジャンルを確立したことで有名な、イタリアの鬼才『ヤコペッティ』による作品。
100年前の奴隷制が行われている時代のアメリカにタイムスリップし、当時の人々を取材するというストーリーで、そこで描かれる様相や人物は、本や資料を元に忠実に描いてるとのこと。
ルーツやマンディンゴのように強いストーリー性が無いため、個人的にはやや単調に感じましたが・・・。
とはいえ、それらの作品では描かれなかった闇の部分を包み隠さず映像化しているとは感じるところではあり、アメリカ黒人の歴史をきちんと把握しておきたい場合は一見の価値はあるでしょう。
なお各種宅配レンタルサービスにも取り扱いが存在せず、唯一見れる方法が『TSUTAYA 渋谷店』でのレンタルでした。
地方在住の人は高騰してるDVDを買う他ないですが、正直そこまでして見る作品では無いかなと(^^;)
アミスタッド
1839年に実際に起きた、奴隷輸送船の乗っ取り事件と、それに関してアメリカで行われた一連の裁判を描いた作品。
ルーツやマンディンゴしかり、黒人奴隷に焦点を当てた映画は負の側面が強いものが多いですが、本作は尺度が異なり『自由を手にする様』を映し出すのが特徴です。
『リンカーン』同様、巨匠スティーブン・スピルバーグが監督となっており、同氏が黒人奴隷問題に強い関心を抱いていたことが分かりますね。
裁判が物語の大きな軸になっていますが、それをとりまく人間たちも魅力的なのが至高。
黒人奴隷の歴史に関心があるならば、必ず見ておきたい作品のひとつです。
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バース・オブ・ネイション
アメリカ奴隷史の歴史上、最大規模の奴隷反乱を起こした人物として知られる、『ナット・ターナー』の伝記映画。
ナットの名前は知っていましたが、映画の存在は知らず、たまたまネットで見かけて視聴したら、予想通り面白い内容でしたね。
伝記映画と言いつつも、1830年代のだいぶ古い出来事であり、獄中のナットをインタビューした白人が出版した本をベースにしてるため、創作が入っているのは致し方ないところ。
他の黒人奴隷系統の映画では、「抑圧され、人として扱われない様」が重点的に描かれているものが多いため、反旗を翻す本作はどうしてもナットに肩入れして見入ってしまいます。
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アメイジング・グレイス
名曲アメイジング・グレイスの誕生秘話というよりは、奴隷貿易廃止に尽力した、政治家ウィリアム・ウィルバーフォースを描いた伝記映画という言い方が適切。
奴隷貿易というと言うとアメリカばかりが矢面に出てきますが、いわゆる三角貿易でヨーロッパのいくつかの国が積極的に関わっており、イギリスもそのうちの一つ。
アメリカよりも数十年早く奴隷制が廃止されたイギリスですが、政治家ウィルバーフォースと、奴隷貿易擁護の保守派との、政治的な意味での戦いが描かれます。
イギリスの視点からも奴隷制を認識することで、新たに得られる知見がありますので、ぜひ見ておきたい内容。
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南北戦争時代
リンカーン
奴隷解放の父と呼ばれる、第16代アメリカ合衆国大統領『エイブラハム・リンカーン』の最後の4か月を描いた伝記映画。
奴隷を開放させる憲法修正案を通すためにつき動く様子と、様々な苦悩が色濃く描かれています。
2012年に公開され、世界中で一躍評判の作品となりましたが、いかんせん予備知識が無いと疑問符だらけ。
上記までで紹介してきた映画で黒人奴隷の歴史を掴むと共に、南北戦争が起きた経緯、アメリカの議会制度あたりを把握してると、すんなり映画が入ってくるでしょう。
個人的には面白い作品でしたが、内容が難しすぎるという意味で、抑え気味の評価にしました。
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ニュートンナイト 自由の旗をかがけた男
南北戦争中に、支配的で高圧的な南軍に対して、農民や脱走奴隷を率い戦ったことで知られる人物『ニュートン・ナイト』の伝記映画。
南軍を敵にするという意味では、北軍と立場を一にするも、北軍から十分な支援は得られず、自給自足で戦い抜く様が描かれます。
白人・黒人が一体となって、反旗を翻したこのような事例があったことは、映画で初めて知ったので非常に参考になるものでした。
『金持ちのために庶民が戦争に駆り出される』という現実に憤り、強い信念を抱いていた人物であることがよく分かります。
ただ少し冗長に感じたところがあり、もう少しコンパクトに収まれば見やすい内容だったともうので、評価はやや抑え目。
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公民権運動以前(1900~1950年頃)
アラバマ物語
アメリカの大ベストセラーである同名小説を原作に、映画化された作品。
舞台は1930年代、人種差別が色濃く残るアメリカ南部で、白人女性への暴行容疑で逮捕された黒人の担当弁護士『アティカス』が主人公。
成長した主人公の娘が回想するストーリー形式ということもあり、子供時代のノスタルジックな原体験と、問題に奮闘する父、という交錯する描写が印象的です。
ブルースなど黒人音楽に親しんでいると、黒人が不当に重い刑罰に科せられていたため、刑務所での録音などを聴く機会も多いですが、実際の不当な有様をより強く認識できる内容であり、物事の理解が深まるのは確かでしょう。
しかし同映画は単なる黒人差別を題材にした作品と形容はできず、リアリティに溢れる子供視点の世界観が強く感じられるのがなんと言っても秀逸。
未だに名作映画として語られる所以が、細部に息づいているのを強く感じます。
黒人差別への関心は抜きにしても、一生に一度は見ておきたい映画と断言しても過言では無く、ぜひ目を通して見て欲しい傑作ですね。
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42~世界を変えた男~
アフリカ系アメリカ人初のメジャーリーガーとなった『ジャッキー・ロビンソン』の伝記映画。
先に紹介した『マンディンゴ』を見た後だと、彼の祖先がどのような扱いを受け脈々と血筋を残してきたか分かるはず。
メジャーに行った当時は1947年でしたが、まだ黒人差別が多く残っており、メジャーリーグも白人だけのもの。
酷い差別を受けるものの、彼の必死にプレーする姿が、徐々にチームメイトや観客を変えて行く感動ヒストリー。
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カラーパープル
20世紀初頭の黒人女性の現実を描いた同名小説を、スティーブン・スピルバーグが映画化したもの。
この作品は黒人系の映画では全く異なった尺度を持っていると感じ、その点に衝撃を受けました。
というのも、大半の映画が黒人の敵である白人という構図ですが、本作は黒人のDV夫と非人道的な父親という、黒人が黒人によって苦しめられている様相となっています。
物語は創作なものの、黒人である原作者が実際に聞いた話を元にしてるそうなので、過酷な描写は珍しくない話だったのかもしれません。
白人がほとんど関わって来ず、白人と黒人の関係性という史実を学ぶのには適していないため、他の映画を色々と見てから見るべき作品でしょう。
差別が題材と言うより、ヒューマンドラマ的な側面が強いです。
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ミス・エバーズ・ボーイズ
アメリカ史に残る人体実験である、「タスキギー梅毒実験」をテーマにした伝記映画。
同実験は、梅毒を治療しなかった場合に病状がどのように変化するか観察する、という非人道的な内容であり、かつ黒人男性のみを対象にしているというもの。
映画の主人公は、同実験において最初から最後まで唯一スタッフとして参加した、女性黒人看護師「ユーニス・リバース」。
議会聴聞を受けながら過去を回想する形式で、物語が進んで行きます。
映画内でも取り上げられているように、まさに黒人を対象にしているからこそ実施された実験であり、実験が始まった1930年代の黒人社会の現状がまだまだ酷かったのがよく分かりますね。
ちなみにプライムビデオではなぜか吹き替え版しかなく、雰囲気ぶち壊しの日本語で興ざめしながらなんとか見た次第。
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公民権運動時代
マルコムX
1960年代の公民権運動の代表的な人物の一人である『マルコムX』。
同氏の自伝を基に、先に紹介した『ドゥ・ザ・ライト・シング』の監督でもある『スパイク・リー』が映画化したもの。
なお原作の自伝はルーツの作者である『アレックス・ヘイリー』が共著しており、映画化にあたっても協力しました。
三部構成に分けて、マルコムXの生涯を丁寧に描いた作品であり、悪童から目が覚め、多くの人々に影響を与えて来たことがよく分かります。
純粋な物語としても非常に面白く、食い入るように見入ってしまいました。
とにかく人間としてのマルコムに惹かれますし、間違いなくオススメできる名作ですよ。
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グローリー/明日への行進
公民権運動の指導者として有名なキング牧師を初めて映画化した作品。
1965年にアラバマ州セルマで実際に起こった『血の日曜日事件』を題材にした内容であり、公民権を求める人たちの苦悩・戦いをリアルに描いています。
非暴力の『キング牧師』、力で対抗する『マルコムX』と、公民権運動を語る上でよく対比されるのがこの2人であり、最低限の歴史をさらっておいた方が、より映画を深く理解できるのは間違いありません。
映画『マルコムX』と併せて見ると、双方がどのように公民権運動に貢献したかよく分かるはず。
奴隷解放から100年経った時点でも、非人道的な扱いを黒人が受けていたことをさらに強く認識し、改めて凝り固まった考えは人を簡単に狂気に陥れると感じたところ。
それにしてもキング牧師の圧倒的な言葉の力には、心から感服しますよ。
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私はあなたのニグロではない
小説家であり、公民権運動活動家としても知られた『ジェイムズ・ボールドウィン』の未完成原稿などを元に、アメリカの人種差別の歴史・彼の米国史への考察を描いたドキュメンタリー大作。
ボールドウィンの友人であった3人の公民権運動家、「マルコムX・キング牧師・メドガーエヴァース」の人生が回想して紹介されます。
それと共に、時折現代の映像や写真を交え、黒人差別が今もなお根強く残っている現状が訴えかけられるのです。
なお上記で紹介した3人や、黒人奴隷の歴史など、全て知ってる体で話が進んで行くので、事前知識が無いとちょっと理解が追い付かないと感じたところ。
映画としては勿論素晴らしいのですが、予備知識が無いと分かりにくいという意味で、★5にはしませんでした。
本記事で紹介している映画を色々と見てからの方が、より一層理解できるのは間違いありません。
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ミシシッピー・バーニング
1964年に実際に起きた、公民権運動活動家3人が殺害された事件をモデルに描いた、ノンフィクション映画。
タイトル通り舞台はミシシッピで、事件の捜査に来たFBIが、KKK(白人至上主義団体)と対立しながらも、事件の解決を図っていく様が描かれます。
一部史実とは違う部分もありますが、基本的には当時の空気感がリアルに伝わってくる内容。
1865年、すなわち約100年前に奴隷制廃止により認められた「法の下の平等」が、機能してないも同然の程遠い状況であったことがよく分かります。
止まらない憎しみの連鎖、黒人住宅の燃え盛る炎など、色々と考えさせられる名作。
FBI捜査官の溢れる人間味も見どころのひとつ。
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大統領の執事の涙
奴隷の息子であった主人公が、紆余曲折を経て大統領の執事という職に就き、見て来た光景を描いた伝記映画。
オバマ大統領が黒人初の大統領ということは、誰しも知っていることですが、それがいかに歴史的な転換点なのかが、よく分かるはず。
公民権運動が分かりやすく描かれているのもあり、アメリカの歴史についても理解が深まります。
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ヘルプ~心がつなぐストーリー~
1960年代のミシシッピを舞台に、富裕層の白人と仕える黒人メイドを描いた作品。
ベストセラー小説を映画化したもので、内容は一応創作ですが、原作者が実際にミシシッピ出身であるため、自身の体験がリアルに盛り込まれているのは明白です。
メイドの職を得なければ、生きて行くことができなかった黒人女性たちの現実がリアルに映し出されていると感じるところであり、他の映画には無い、一般社会目線が勉強になります。
ヒューマンドラマ要素も強く、黒人差別に関心が無くとも楽しめる映画だとは思うところ。
しかし奴隷制時代および公民権運動についての知識があったほうが、どのような時代の流れを経て映画の現状に至ってるか、深く理解できるはず。
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招かれざる客
公民権運動最中の1967年に公開され、人種問題に真正面から切り込んだ上に、ハリウッド映画史上初の黒人男性と白人女性のキスシーンを描いた、アカデミー賞受賞作。
白人の娘が結婚相手として連れて来たのは黒人青年だったというのが簡単なあらすじで、双方の家族の葛藤を描くというもの。
これだけ聞くと単なる家族ドラマのように思うかも知れませんが、本記事で紹介している他の映画などを見て黒人差別への知識がある程度あれば、この結婚がいかに議論を巻き起こすものか容易に想像できるはず。
逆に言えばある程度知識があった上で見た方が、より意味を理解して見れるのは間違いありません。
そして本作の凄い点が、二時間近い上映時間であるのに、作中は一日の出来事であるということ。
にもかかわらず冗長とは微塵も感じず、どんどんと惹き込まれていく面白さがあるのが、いかに素晴らしいストーリーかよく分かるでしょう。
創作物語ですが、当時の社会問題を的確に反映した良作ですので、必ず見ておきたいところ。
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夜の大走査線
主人公が先の『招かざれる客』と同じ「シドニー・ポワティエ」である同作。
人種差別が激しいミシシッピ州で殺人事件が発生し、偶然捜査に参加する敏腕黒人刑事と周囲の軋轢を描いています。
公民権運動の最中に制作されたということもあり、当時の緊迫感を如実に現わす内容になっていると言えるでしょう。
アカデミー賞受賞作、アメリカ国立フィルム登録簿登記作と、名実ともに後世に語り継がれる作品。
単なる差別を描くのではなく、深い人間ドラマも展開されるのが見どころですよ。
デトロイト
公民権運動の最中、工業都市デトロイトで実際に起きた暴動と、暴動中の衝撃的な事件として知られる『アルジェ・モーテル事件』を題材にした映画。
できる限りドラマ性を排除し、史実に沿った細かい演出がされており、とくに後半40分は息を飲むように画面に釘付けになるのは間違いありません。
モータウンのお膝元が舞台ということもあり、ソウルグループ『ザ・ドラマティックス』も物語に関わって来ることから、音楽の知識があればなおさら深い理解ができますね。
奴隷制隆盛時代の南部白人のような人間が、この時代にもまだまだ当たり前のようにいたことを強く認識させられます。
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アメリカの影
ニューヨークに住む黒人の血が流れる三兄弟の苦難と日常を描いた物語。
話の胆は、長男は完全な黒人であるものの、弟と妹は白人の血が強く見た目は完全に白人という複雑な様相であること。
なんと台本無しの映画であり、黒人差別という題材を抜きにし、ジャズ映画として映画通には高名な作品だそうです。
とはいえ、僕のような一般映画視聴者にとっては、物語の起伏も無い上に分かりにくい内容だったので、よほどの映画通や映画製作に携わる人でないと楽しめないと感じました。
ただ、見た目がほぼ白人という黒人が主人公というのは珍しい作品であり、過去の黒人奴隷の歴史を知っていれば、ほぼ白人同然の黒人も時代が経つにつれて増えるのは当然であり、新たな軋轢を産む要因にもなるのだなと学べました。
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オールザウェイ
公民権法を成立させたことで知られる、第36代アメリカ大統領『リンドン・ジョンソン』の就任から再選までを描いた一作。
先の『グローリー』では、どちらかというと公民権法に消極的に描かれてましたが、史実としては積極的に推し進める姿勢である同作が正しいです。
話の主軸はジョンソンであるものの、公民権運動に関わる人物や出来事が多数登場するため、黒人運動の歴史を学ぶ上でも非常に的を得ているところ。
近年、世界的人気を誇る海外ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』で知られるHBO作品であるため、圧倒的にクオリティの高い構成・映像に一気に見終えてしまいました。
事前知識として他の公民権運動関連映画や、こちらの記事で紹介している『J・エドガー』を見てからの方が細部にまで理解が及ぶと感じますね。
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ラビング 愛という名前のふたり
異人種間結婚を禁じる法律を無効にした裁判として有名な「ラヴィング対ヴァージニア州裁判」の当事者である、ラヴィング夫妻を描いた伝記映画。
異人種婚が違法であったヴァージニア州で、逮捕されたラヴィング夫妻の苦難の道が描かれており、人種差別に苦しめられながらも、互いの愛で支えあう姿に涙を誘われます。
黒人と白人の結婚というと、『招かれざる客』『ゲット・アウト』とも通じる部分がありますが、本作は事実であるというところに大きな相違があります。
同判決の後も、アラバマ州では2000年まで州憲法に反異人種間混交が残っていたほどで、南北戦争から100年以上経てど、いかにアメリカは北部と南部で異国のような状態であるか考えさせられます。
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19世紀後半~近代
ホワイト・ドッグ
主人公の女性がある日車で犬を轢いてしまい、助けたその犬は、黒人を攻撃するように調教された攻撃犬だった、という恐ろしい物語。
奴隷制全盛時代を舞台にした映画を見ると必ずと言っていいほど出てくるのが、逃亡した奴隷を追う犬という構図。
このように昔からいわゆる奴隷狩りに犬が使われてきた歴史があり、実在するかは定かではありませんが、現代において白人至上主義者が調教して産み出した犬がテーマなわけです。
「黒人だけを襲う犬=ホワイト・ドッグ」という名称で呼ばれており、暗にkkkなどの白人至上主義的な考えを映し出そうとしているのにも着目したいところ。
ホラー映画まではいかないものの、恐ろしい犬が主軸にあるスリリングな展開に、食い入るように見入ってしまいました。
配信は一切されておらず、DVD購入する他無いですが、それだけの価値はある良作。
ドゥ・ザ・ライト・シング
アメリカ・ブルックリンを舞台に、黒人のありのままの日常を描きながら、現代の人種差別問題に警鐘を鳴らした屈指の名作。
平凡な日々が、とある事件を発端に人種間の暴動に発展するまでをリアルに描いています。
映画が公開された3年後に人種問題による暴動が現実となることから、いかに監督が社会の空気を捉えていたのかが分かりますね。
時代設定的には、おそらく映画が製作・公開された1980年代後半だと思われます。
先まで紹介してきたものは時代設定が古いものが多く、本作は珍しく近代が舞台ですが、それでもなお黒人差別が蔓延っていることに、なんとも言えない悲しさを感じますね。
セリフに『クンタ・キンテ』が登場したり、主人公が42番の野球ユニフォームを着てるなど、先に紹介した映画を見ておくと、いかに細かいところまで凝っている映画かよく分かりますよ。
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ダーク・スティール
1992年に実際に起きた事件『ロス騒動』をモチーフにした作品。
騒動の引き金として有名な『ロドニー・キング事件』の実際の映像が挿入されているなど、創作ながら史実としての当時の社会状況を掴むにはうってつけの映画でしょう。
腐敗した警察組織やそれに納得いかない職員など、人間味がまざまざと出ており、実際にこんな人物がいたかどうかは別として、グイグイと惹き込まれる魅力があります。
描かれる暴動の世紀末感はすざまじく、張り詰めた空気感が画面越しでもリアルに伝わってきますね。
奴隷制がとうの昔に無くなっているものの、90年代の近代においても黒人差別が蔓延っていたことを知ると、いかにアメリカ社会は深い闇を抱えているか実感するところ。
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アメリカンヒストリーX
黒人差別を題材にした映画というのを抜きにしても、今年見た映画の中で一番心に残った名作と言っても過言ではありません。
物語のあらすじは、簡単に言うと白人至上主義に身を染めている兄弟の物語。
時代設定は、92年のロドニー・キング事件が作中の会話で登場するので90年代半ばというところ。
父親が黒人に殺されたことをきっかけに、過激な思想に走り、挙句黒人を殺害し刑務所行きの兄デレク。
そして兄を崇拝する弟・ダニーといった構図ですが、3年後に刑務所から出て来た兄は別人のように穏かになっていたというもの。
兄が変わった理由、そもそも何故に極端な思想に走るに至ったかなどが紐解かれて行く上で、色々と感ずるものがあるはず。
『怒り・憎悪・憎しみ』に動かされる人間の姿が克明に描き出され、『怒りは何も生まない』というのが映画の根源的な主張と感じますね。
世界最大級の映画データベースでトップ250にランクインしてるほどであり、誰しも認める名作と言えますので、ぜひ一生に一度は見て欲しい作品です。
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評決のとき
アメリカで大人気を博した小説を原作に映画化したもの。
タイトル通り法廷もので、娘に暴行を加えた白人を殺害した、黒人男性の裁判の行方を描いています。
内容は完全なる創作ですけども、実話であってもおかしくないようなリアリティがありますね。
とくにラストは映画史に残る屈指の名シーンと言っても過言ではなく、作者が真に訴えたいことが詰まっていると感じました。
『アラバマ物語』も黒人絡みの法廷ものですが、映画全体としてはまた違った尺度が味わえると思うところ。
海外ドラマ『24』ファンの方にとっては、ジャック・バウワーとしてお馴染み『キーファー・サザーランド』が出てくるのもポイント。
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チョコレート
『孤独』をテーマにした、白人男性と黒人女性のラブストーリーといったところですが、黒人差別が題材というよりは、ヒューマンドラマ的な側面が強いです。
いささか強引なストーリー展開に疑問符が浮かぶことはありつつも、全体としては綺麗にまとまっている創作映画。
時代的には近代ですが、今もなお、あからさまな黒人差別が漂う空気感は強く感じますし、奴隷制時代からの白人意識を強く持っている人が、今もなお多くいること現状を、映画を見て容易に想像できます。
評価が二分されている映画ですが、見るか悩むよりも、とりあえず実際に自分で見て考えた方がよいでしょう。
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ゲット・アウト
完全なる創作なので、歴史史実を学びたい際には見る必要は無いですが、黒人差別を取り入れたホラーで楽しませる映画、という意味では一級品の面白さであると言えます。
ジャンルはホラーですが、ホラーが大の苦手な僕も最後まで見れたので、ご心配なく。
黒人青年が、白人の彼女の実家に行くというストーリーで、さながら名作『招かれざる客』のような展開ですが、想像の斜め上を行く出来事が待っているというもの。
あまり書くとネタバレになってしまいかねない映画なので、とにかく見てもらいたい作品。
ちなみに本国の映画レビューでも抜群に評価が高く、その面白さの程度が分かっていただけるはず。
なお、典型的な白人家庭を理解していた方が、物語の空気感をさらに掴めるので、『マンディンゴ』『ルーツ』などの奴隷制全盛時代の作品を先に目に通しておくのがオススメ。
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フルートベール駅で
30本以上黒人差別系の映画を見た後だったので、もはや最初の時点でオチが見えるほどでしたが、それを抜きにすれば純粋に良質な映画と言えるでしょう。
実際に起きた黒人青年が白人警官に射殺された事件を映像化したもので、「リアルな生活」を重点に置いてたのが、非常に魅入らされました。
批評家の評価も高いですし、もちろん最後までじっくり見ましたが、個人的にはやはりスパイク・リー作品といったところには及ばないかなと。
とはいえ物語が現代なので、そうした意味でまだまだこの時世に及んでも、永遠と差別思想は残ってることを如実に訴えてくる内容でしょう。
「黒人差別・奴隷制を扱ったおすすめ映画を紹介【覚えておきたい歴史】」まとめ
つらつらと作品を紹介してきました。
まだまだ見れてない作品もたくさんあるので、随時内容は更新していきます。
1900年代以降の黒人差別を題材にした映画となると、そこまで過激な描写は無いですが、1700~800年代を描いた映画は過激な描写が多いです。
しかしそれは嘘偽りの無い事実であるということを認識すると、同じ人間が家畜同然の扱いをされていたことに、なんとも言えない憤りを覚えざるにはいられません。
先にも書いたように、この歴史があった上でブルースが生まれ、ひいては全ての現代音楽に繋がって行きます。
きっと音楽の聴こえ方が違ってくるはずですので、目を背けず見てもらいたい映画ですね。
また、これらの作品は『amazonプライムビデオ』・『DMM月額レンタル』のいずれかで見れます。
それぞれどっちで見れるかは、作品ごとの「おすすめの視聴方法」を参考にどうぞ。
→『 おすすめ音楽映画『ロック好き必見』』に戻る。
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関連記事 疲れた時に楽しい動画がすぐ見れる。VODの7つのメリット。
疲れた時に楽しい動画がすぐ見れる。VODの7つのメリット。同じ題材の本も紹介してますので、参考にどうぞ。
黒人差別・奴隷制を扱ったおすすめの本