スズキサトシ(@sasa_rhythm)です!
前作から1年ちょっと、1stアルバムのツアーの熱気も冷めやらぬ中、発売されたのが2ndアルバム『ましまろに』。
ちなみに、『に』というのは『2』とかけていて、ニュアンスが面白いですよね。
前作ではレコーディングに際し若手を呼んだものの、今回リズム隊は、前回も参加した大槻敏彦、伊賀航の両名のみ。
キーボードで再び伊藤ミキヲ氏も参加し、後はストリングス等で2名といったところ。
前作は初めての作品ということで、真っすぐなアコースティック感が強かったですが、本作は非常に音色に富んでいる状況。
とくに1曲目の朝のリードギター音は、初めて耳にする人が大半のはず。
楽曲に関しては1曲を除きマーシーによるもので、前作で久々に見せてくれたノスタルジックな世界観を、本作でも引き続き表現してくれています。
クロマニヨンズではどうしても、マーシー個人の色が強すぎる曲は出せない雰囲気なので、コアなマーシーファンにとっては、マーシーがマーシーたる楽曲を聴くための場として、ましまろは必要だと強く感じます。
しかしながら、2016年8月に本アルバムを出し、10月にツアーを終えて以降、ましまろの活動は一切ありません。(2019年3月現在)
マーシーもクロマニヨンズで毎年アルバム・ツアーの日々ですし、真城さんは様々なユニットを組んだりと多忙な状況。
なかなか時間の折り合いが付かず、活動できないことは想像できますが、いつの日か再開して欲しいと願うばかりです。
では中身に入っていきましょう。
ましまろに 楽曲解説
朝
作詞・作曲/真島昌利
マーシーソロ2nd『HAPPY SONGS』で同名曲がありますが、全くの別物。
ソロ作品の方はゆっくりとした朝の時間といったイメージでしたが、こちらは霧がかった荘厳な朝の風景が浮かびます。
Csus4→Cという単純なリフですが、歌詞の雰囲気と絶妙にマッチしているんですよね。
サウンド面で特筆すべきは、中森さんのギター。
このサウンドは、「ギターをフィードバック+スライドバー+E-BOW」という、聞いたことが無い組み合わせで出しています。
中森さんの引き出しの多さがすざまじいですね。
昔の朝と、今の朝、そもそも関連性があるわけではないですが、ぜひ聞き比べてみてください。個人的には後者が好みです。
さがしもの
作詞・作曲/真島昌利
スライドギターのリフが印象的な一曲。
リフはデモの時点で最初から入っていたそうですね。
マーシーの詩的な世界観満載で、かなり抽象的な内容で、「さがしもの」が何を指すのかイマイチ理解できません。
菩提樹の下、籐の籠といったワードから、ヨーロッパな光景が浮かんで来る気も。
意味はさておき、雰囲気を味わえばいいのかもしれませんね。
けあらしの町
作詞/真城めぐみ・作曲/中森泰弘
アルバム唯一の、ヒックスヴィルコンビの一曲。
前作の『いつかどこかできっとまた』同様、マーシーの世界観に寄せている感は、やはり感じますよね。
マイナー調なメロディで、独特な雰囲気が漂います。
ちなみに「けあらし」とは、水面に立ち上がる霧が、湯気のように見える現象のこと。
北海道の海辺でよく見られる現象だそうなので、光景を浮かべながら曲を聴くと、違った景色が見えそうです。
ひき潮
作詞・作曲/真島昌利
アルバム収録中一番短い曲で、言葉数も少ないですが、美しい光景が眼前に浮かんで来る感じは流石マーシー。
海辺な雰囲気をすごく感じますよね。
ちなみにアナログ盤のみ、同曲のインストバージョンが収録。
美しさがより一層引き立つので、ぜひアナログで聴いて欲しいと思うところ。
ナポリの月
作詞・作曲/真島昌利
ナポリは観光で有名なイタリアの都市。
実際にマーシーは旅行で行ったことがあり、その時の思い出を元に作ったそう。
木琴のような音が入っており、アレンジ面も非常に美しいですね。
主張しすぎないエレキギターの入れ方も流石。
ナポリの月に 話しかけても 眠たそうに 知らんぷり
という擬人表現が、マーシーにしか出てこないと強く感じますね。
遠雷
作詞・作曲/真島昌利
同アルバムかシングルカットされた一曲。
「遠雷」とは遠くで鳴る雷のことで、夏に発生しやすいことから、夏の季語になっています。
いかにも夏が大好きなマーシーらしいテーマ。
アレンジはデモの段階でほぼ固まっており、レコーディングに際してアレンジはほぼ加えてないそう。
リフをアコギで弾いてるのも雰囲気を増長させており、始まった瞬間から一気に曲の中に惹き込まれますね。
ローラーコースター
作詞・作曲/真島昌利
同アルバムのハイライトとも言える、屈指の名曲。
人から見りゃ何の役にも立たない 色んな事が今日も僕を連れてく
という言葉が珠玉で、何度聴いてもこの一節で涙を流さずにはいられません。
タイトルにある「ローラーコースター」とは、まさに自分を乗せてくれるものを指しており、比喩表現が素晴らしいなと、つくづく思います。
ましまろの中で1曲選べと言われれば、間違いなくこの曲を選ぶとこであり、「好きなことがあればそれで生きていける」と、背中を押してくれる素晴らしい曲ですね。
成りゆきまかせ
作詞・作曲/真島昌利
そのまんま成りゆきまかせでいいじゃないかという、楽観的なメッセージがこもった一曲。
「大きくしてもしょうがないから いいんだよ」という一節が深く考えさせられるところ。
ほとんどの人は成功というと、物事を大きくすることと捉えがちですが、規模が大きくなれば良いとか凄いとかじゃなく、もっと根本に大事な事があると感じさせてくれます。
単純なコードワークのリフで印象に残るのも良いですね。
妙なねじれ
作詞・作曲/真島昌利
ボサノヴァ風な雰囲気が漂う一曲。
これまた難解な歌詞ですが、すれ違う2人といったような印象を受けます。
タイトルを見れば暗い曲の印象がしますが、実際に聴くとかなり明るいんですよね。
そういった意味で、良い意味でのねじれが生まれてきた、という風にも思えます。
わたりどり
作詞・作曲/真島昌利
アルバムを締めくくるに相応しい、詩人マーシーを体現する一曲。
タイトル通りわたりどりについての歌なのですが、もう美しいのなんの。
真城さんと中森さんは、最初に聴かされた後、圧倒されて言葉が出てこなかったそうですよ。
お前がつかんで なぜた風が 今日僕に吹く
という最後の一節がとくに素晴らしく、わたりどりが翼で羽ばたかせた風が、今、自分に吹いているんだという視点は、マーシーしか持ちえない見方だと感じます。
「【アルバムレビュー】ましまろに/ましまろ」まとめ
ということで、2ndアルバム『ましまろに』の紹介でした。
改めて聴くと、前作と比べて全体的なサウンドが落ち着き気味というのは感じますよね。
とはいえ、この落ち着いた感じこそましまろであり、クロマニヨンズでは味わえない、至極のリラックスしたひと時を、音源で味わうことができます。
ちなみに同アルバムのツアーでは、日替わりでビートルズソングを披露。
「twist and showt」「Ticket to Ride」などを演奏し、会場は大いに盛り上がりました。
ステージではホッピーを飲みながら演奏するなど、絶妙なゆるさがましまろならではと思うところ。
お酒は入っていても、演奏クオリティは当然にハイレベルなのが流石プロ。
今後ましまろの3rdアルバムがいつ出るのか分かりませんが、まさに成りゆきまかせで動いている感じでしょうし、気長に待ちましょう。
アコギを弾く喜びというのは、マーシーの中に必ずあるはずですし、そのうち急にやり出す
日も近いかもしれませんよ。