スズキサトシ(@sasa_rhythm)です!
ソロデビュー作にして屈指の名作『夏のぬけがら』発売から約1年半、満を持して発売されたのが2nd『HAPPY SONGS』です。
1stの雰囲気を継承しつつも、ボサノヴァなど多種多様な音楽要素を混ぜて来た本作。
純粋に人気が高いのは前作の方ですが、本作も楽曲のクオリティは非常にハイレベル。
詩人マーシーを体現する、美しい言葉を聴くことができます。
レコーディングには前作同様、元ブレイカーズの篠原太郎氏に加え、同バンドドラマーの大槻敏彦氏も参戦。
他にも白井さんやディープ&バイツと言ったお馴染みの面々が揃います。
特筆すべきは同アルバムの発売後、「僕らの夏休み」と題して、初のソロライブを慣行したこと。
メンバーは「マーシー+ブリックストーン+山川のりお+白井幹夫」といった具合。
同ライブの模様は映像化されていますが、なぜか名曲『ルーレット』が収録されておらず、選曲に疑問符が付くのが残念。
以降、マーシーは色々とソロでライブをやるようになりますが、ブルーハーツほど需要が無いのもあって、残念ながらきちんと映像・音源化されていないんですよね。
まあ嘆いてもしょうがないので、数少ない世に残してくれたマーシー作品を、思う存分堪能しましょう。
HAPPY SONGS 楽曲解説
オーロラの夜
作詞・作曲/真島昌利
同アルバムの始まりにして、一番好きな一曲。
シングルカットもされましたね。
PVもありますが、公式には残っておらず。
Youtubeで「オーロラの夜」と調べるとすぐ出てきますので、ぜひ見てくださいね。(2019年3月現在)
白井さんのキーボードリフが象徴的で、シンプルながら超絶に心地よいのが魅力的。
歌詞の内容的にはいかにも夏大好きなマーシーといったところ。
「夏がオーロラのように消えてしまう前に」という主張が読み取れますね。
全体的に抽象的ではありますが、キャッチーなメロディーといい、マーシーらしい珠玉の名曲です。
砂丘
作詞・作曲/真島昌利
モータウンビートが映える名曲。
ブレイカーズ時代の「屋上の落後者」を、歌詞を載せ替えたもの。
この曲も神秘的な感じで好きですが、やっぱり元々のバージョンの方がカッコイイと思うところ。
ヒロトと違いマーシーは、昔の曲を持ってきて歌詞を載せ替えるのをよくやりますが、個人的にはどれも旧バージョンの方が断然良いんですよね。
「君と砂丘に行きたい」という内容ですが、妙に韻を踏んだ歌詞が印象的。
休日の夢
作詞・作曲/真島昌利
前2曲とは毛色が違う、ボサノヴァ風な一曲。
アコギのソロが雰囲気に完璧にマッチした弾き方で、感動するほど。
誰が弾いてるか分かりませんが、篠原太郎さんなのかなと推測。
ソロでサックスも入ってくるなど、アレンジも非常に凝ってますね。
ちなみに歌詞中に出てくる「ビリー・ホリデイ」とは、伝説的女性ジャズシンガー。
朝
作詞・作曲/真島昌利
後にましまろで同名曲が発表されてますが、全く違う曲。
自分でも過去に朝という曲を発表していたことを、忘れていたんじゃないかと思ったり(^_^;)
ものすごくシンプルなアコースティックアレンジで、歌を聴かせる内容。
短い歌詞ではありますが、マーシーにしかできないような朝の切り取り方をしており、美しい言葉に酔いしれます。
ホープ
作詞・作曲/真島昌利
「希望」をテーマにした一曲。
前曲に引き続きアコースティック感が強いですが、スライドギターのリフが象徴的です。
時間は戻ってこないけど 時間は優しくもなるんだ
という表現が、まさにマーシーの優しさを現わしていると感じますね。
夜空の星くず
作詞・作曲/真島昌利
こちらもシングルカットされた一曲。
アコースティックながらも、『オーロラの夜』同様のバンドアレンジ調です。
オーケストラを織り交ぜており、かなり凝っているのが伺えますね。
夜空の星くずをテーマにしており、恋愛色が出た内容が、色々と感じさせてくれるところ。
ダイナマイトが150屯
作詞:関沢新一・作曲:船村徹
アルバムに2曲だけ収録されているカバーの一つ。
元々は1958年に映画俳優「小林旭」が歌いヒットした曲です。
同氏が歌ったものはマーシーバージョンとは違い、演歌調を感じるところ。
1958年と言えば、リトルリチャード引退、エルヴィス徴兵と、いわゆるロックンロール最初の暗黒期の最中。
そんな中、日本では演歌っぽい曲がヒットしていることを考えると、まだまだイギリス・アメリカと比較してウケる音楽が、全然違う印象を受けます。
同曲は「甲斐バンド」もカバーしてますが、バンド調なものの、アレンジは違います。
マーシー版のアレンジはマーシー自身で考えたのか、謎が残りますね。
サンフランシスコの夜はふけて
作詞・作曲/真島昌利
前曲に引き続き、ベースラインが映えわたる一曲。
サンフランシスコで暮らす日々を描いたような内容ですが、創作なのか、何か元ネタがあるのか不明。
マーシーの趣味である、読書や絵画などのワードが登場します。
「ライ麦畑」はサリンジャーの小説『ライ麦畑でつかまえて』、「エルグレコ」とは、ギリシャ出身の有名な画家のこと。
とても寒い日
作詞・作曲/真島昌利
いかにも冬に作ったような内容。
ほんわかした雰囲気ながら、マーシーらしい認識の仕方が良いですね。
スライドギターが良い味を出しており、安らぎを与えてくれるサウンドに仕上がってます。
2人でいれば
作詞・作曲/真島昌利
有名な曲では無いですが、アルバム屈指の名曲だと思います。
シングルカットされた『夜の星くず』よりも、断然良い曲だと思うんですがねえ。
「君さえいればいい」という熱いメッセージがこもっており、マーシー珠玉のラブソングだと感じます。
ガソリンアレイ
作詞:ロッド・スチュワート・作曲:WOOD RONALD DAVID
オリジナルはロッド・スチュワートの楽曲で、それを浅川マキさんがカバーしたものを、さらにマーシーがカバーしたという恰好。
キーボードの白井さんが、過去に浅川マキさんのバックで弾いてたので、その絡みでの選曲でしょうか。
マーシーバージョンも至高ですが、本家ロッドverもリアル感に溢れ必聴です。
HAPPY SONG
作詞・作曲/真島昌利
同アルバムのタイトルにもなっている、締めくくりの一曲。
直訳すると「楽しい歌」といったところですが、まさに楽し気な雰囲気があふれ出ている曲と言えます。
はるか昔アメリカ西部の酒場で演奏されていたような、カントリー調のアレンジが特徴で、あっという間に楽曲の世界観に引き込まれてしまいますね。
冒頭にある「昼間っから酔っぱらって~」のくだりが、ヒロトのことではないかという説もありますが、真意は不明。
マーシー自身気に入っている曲で、後年のソロツアーでも取り上げてます。
そしてヒロトマーシーで立ち上げた合同会社の社名を、「ハッピーソング」としてるのは有名な話。
「【アルバムレビュー】HAPPY SONGS/真島昌利」まとめ
2nd『HAPPY SONGS』の紹介でした。
前作と比べると、個性豊かなアルバムになっている印象を受けますね。
マーシーの一番の特徴はやはり並外れた文学性と感じるところであり、ソロ作品になるとその嗜好性が顕著に出ると思うところ。
夏が好きなマーシーですが、同作では冬を感じる曲が多いのが印象的。
それ故に四季に例えるならば、1stは夏、2ndは冬とも言われたり。
いずれにしても楽曲を通して四季をリアルに伝えられる、マーシーの素晴らしい曲があってこその話ですよね。
残念ながら2枚目にしてソロアルバムは折り返しで、続く2枚を最後にマーシーのソロアルバムは出ていません。
どのアルバムも良いのですが、後の2枚もとんでもない名作なので、必ず聴いてもらいたい作品ですね。