スズキサトシ(@sasa_rhythm)です!
マーシーの3rdソロアルバム『RAW LIFE』。
前2作はノスタルジックな作風で、マーシーの少年期や、育ち見て来た風景を感じさせるものが主でした。
しかし本作では一転、急に社会性の強い内容に変貌。
現代社会に意を唱えるかのような、攻撃的な歌詞が飛び出すのです。
あまりの変わりようは、当然誰しも疑問に思うところであり、当時の雑誌のインタビューでは『そうゆう気分だった』という風にはぐらかしてますが、何かきかっけがあったのではないかと、勘繰らざるには得られません。
サウンドもこれまでのアコースティック調から、激しいロックサウンドへ。
ブルーハーツ同等、もしくはそれ以上に大きな音でかき鳴らすギターが特徴的です。
レコーディングメンバーにおいても変化が。
過去2作では主として、ブレイカーズ時代の盟友、篠原太郎が深く関わっていましたが、本作からは佐久間正英とそうる透が軸。
佐久間正英はブルーハーツの2nd『YOUNG AND PRITY』をプロデュースしたことで有名な、元四人囃子のベーシスト。
そうる透は12歳からプロとして活動している、言わずもがなのスーパードラマーです。
このように多様な面で変化が見える本作。
マーシーの新境地とも言える楽曲の数々を、紐解いていきましょう。
RAW LIFE 楽曲解説
RAW LIFE
作詞・作曲/真島昌利
同アルバムのタイトルにもなっている一曲。
まさにアルバム全体の印象を決定づけるかのような内容で、聴いた瞬間に過去作とはまるで違うというのを感じられます。
ひたすら繰り返される図太いリフが印象的で、ブルーハーツとは違う、ハードロック的なニュアンスも出ていますね。
因みに『RAW LIFE』は「生々しい生活、むき出しの生活」といった感じの意味合いで、マーシーが思う、「生」というものがふんだんに詰まっているように思えます。
なお途中にエロチックな歌詞があるのですが、効果音としてA●女優「野坂なつみ」の声を入れているという。
スタジオに来てもらい録音しており、歌詞カードにも『Sexy Voice on”RAW LIFE”Natsumi Nosaka』との記載がちゃんとありますよ。
俺は政治家だ
作詞・作曲/真島昌利
タイトルからして社会風刺感が満載ですが、まさにそういった内容の一曲。
なお同曲はシングルカットされています。
後に紹介していきますが、むしろキャッチーな名曲があるにも関わらず、あえてこの曲を選ぶあたりが、全くもってソロで売れようとか思っていない、マーシーのカッコ良さが見えますね。
ひたすら政治家を皮肉る歌で、何がきっかけでできたのか不思議な内容。
ちなみに同曲でミュージックステーションに当時出演したのですが、ほぼ放送事故同然(^^;)
観覧席にいる一部のマーシーファンの女性のみが黄色い声を上げるものの、他の人は完全にドン引きでした(笑)
それもそのはず、Tシャツにガムテープを張ってシャウトしながら政治家について批判する歌を歌ってたら、一般人は引きますよね(笑)
あえてテレビでこういったパフォーマンスをするのが流石。
GO!GO!ヘドロマン
作詞・作曲/真島昌利
チャックベリースタイルのリフから始まる、ロックンロールナンバー。
タイトルから容易に想像できるように、こちらも社会風刺の効いた一曲ですね。
「ヘドロ」とは、簡単に言うと有害物質を含んだ泥で、歌詞の内容も環境問題に絡んだ内容ばかり。
同曲もシングルカットされており、「俺は政治家だ」と並び、タイトルからして社会風刺ソングと分かる2曲を選んでるあたり、マーシーの悪意を感じます(笑)
エゴでぶっとばせ
作詞・作曲/真島昌利
こちらもリフが印象的な一曲。
同アルバムは、リフから作ったような曲が多い印象を受けます。
実はよく聴くと分かるのですが、味付けに加えられたアコギ音もポイントですね。
「エゴ」とタイトルに入っているように、短い歌詞ながらも皮肉に富んだ内容。
かしこい僕達
作詞・作曲/真島昌利
同アルバムで初めて登場したキャッチーなナンバー。
キーCのメジャー調な感じと言い、ある種浮いてますが、それもそのはず、この曲自体は90年の時点で存在していました。
未発表のままであったのが、アルバムの趣旨と合致する内容であったため、今回収録するに至ったという経緯ですね。
ここで言うところの「かしこい僕たち」頭の良い人間という意味ではなく、皮肉的に「自分は頭が良いと思い込んでいる人間」のこと。
改めてマーシーの詩の奥深さを感じますね。
煙突のある街
作詞・作曲/真島昌利
暗い感じの問題提起ソング。
ストーリー調なのが珍しいですね。
この曲もアルバムのために作ってたのではなく、ブレイカーズ時代に演奏されていた曲。
とはいえ、ミドルテンポなマイナー調で、社会性の強い歌詞は、むしろブレイカーズの中ではかなり浮いている感じ。
逆にブレイカーズで演奏しようと思ったのが謎ですね。
とくにマーシーの生まれ育った地で、歌詞のような汚染された工場地帯は無かったはずですし、小説か何かにインスピレーションを受けたのでしょうか。
『蟹工船』と同じような匂いを、同作からは感じます。
ドライブしようよ
作詞・作曲/真島昌利
歌詞的な意味で一番浮いていると思う曲。
これ以外の曲は表現技法の違いはあれど、必ず社会風刺的な側面を持ち合わせているのですが、この曲だけはそれが無いんですよね。
単純に「心地よい春にドライブしよう」といった内容なので。
「酸性雨が降り注ぐ中、ドライブしよう」だったら分かりますけど(笑)
曲が足りなくて突っ込んだのかもしれませんが、だったらシングルB面に入れた『I FOUGHT THE LAW』の方が、内容にもマッチすると思うところ。
情報時代の野蛮人
作詞・作曲/真島昌利
アルバムが発売されたのは1992年。
徐々にインターネット技術も進歩し、情報化社会へ進みつつあった日本。
そんな状況を見て言いたかったことがあるのではないのでしょうか。
韻を踏んだ歌詞もあり、聴いてて楽しめるポイントが多数。
ギターソロもマーシーには珍しくワウを使ってるのが、サウンド面での印象的なところ。
関係ねえよパワー
作詞・作曲/真島昌利
ディドリービート直球が気持ちよく、リズムが印象的な一曲。
間奏で南国調なニュアンスも入ってきたり、音遊び的な側面が見えます。
「どんなことがあっても関係ない」という、マーシーのシンプルな思いがこもってる言葉が、たまりません。
時折マーシーらしい文学表現が顔を覗かせ、エジソンのくだりがまさにマーシーらしいなと。
こんなもんじゃない
作詞・作曲/真島昌利
同アルバムのハイライトと言える名曲であり、マーシーソロにおいてもトップクラスと言えるほどの曲。
冒頭のキーボードの音を聴いただけで、猛烈に泣けてきてしまうんですよねえ。
元々は「ボニーとクライドのうた」として、夏のぬけがらの収録候補に挙がってましたが、結局は収録されず。
どの時点でマーシーが改変したか定かではありませんが、タイトルにもなっている印象的なワード「こんなもんじゃない」という言葉が加えられ、この名曲が完成しました。
反骨心むき出しの「こんなもんじゃない」という一節が、楽曲の印象を決定付けており、歌詞の組み合わせのセンスが本当に天才的。
「青空」に負けず劣らずの、まさに詩人マーシーを体現する一曲と言っても過言ではありません。
加えて金子マリのコーラスも滅茶苦茶良い味を出してるんですよ。
微妙にしゃがれた感じの声は唯一無二。
ちなみに歌詞に出てくる「ボニーとクライド」とは、実在したアメリカの犯罪者カップル。
『俺たちに明日は無い』という、ボニーとクライドをテーマにした映画を見た上で、改めて曲を聴くと、マーシーの言わんとすることがさらに分かりますよ。
RAW LIFE(Reprise)
作詞・作曲/真島昌利
「RAW LIFE」のアレンジ違いバージョン。
レゲエとも感じるようなアレンジをしており、声の特殊加工も相まって、電子的な印象を受けます。
ちなみに1番と4番の歌詞は異なっており、Repriseの1番ではマーシーのルーツミュージシャンの名前が頻出。
4番はエロティックから詩的なものに変わっています。
アレンジ面では通常の「RAW LIFE」が好みですが、歌詞面では「Reprise」が好み。
ですメタル
作詞・作曲/真島昌利
マーシーのお遊びソング。
捉え方によっては一番攻撃的な曲と言えるところ。
なぜなら「おふざけメタル」といった感じの内容で、いわゆる『デスメタル』の「デス」を日本語表現の「です。」とかけています。
やもすればメタル好きな人に、「メタルをバカにするんじゃねぇ」と言われそうな軽い感じが面白いです(笑)
「【アルバムレビュー】RAW LIFE /真島昌利」まとめ
同アルバムは長らく廃盤であったのですが、2007年に『RAW LIFE -Revisited-』として待望の再発がされました。
しかも当時『RAW LIVE』と題して行われたライブにおいて、前座として行われた、マーシーによるアコースティック編制のライブが、ボーナスディスクとして初めて公式に音源化。
加えてシングルB面曲、『踊り踊れば』『I FOUGHT THE LAW』も収録される豪華さ。
今から入手する方は、再発版を買っておけば楽しめること間違いありません。
ちなみに再発にあたってはリマスタリングが施され、微妙に音質や音圧が違います。
マニアな管理人はオリジナル版を中古で入手して、聴き比べるなどしましたが、そこまでする必要はありませんよ(笑)
ということでマーシーソロ唯一のロックアルバムと言える『RAW LIFE』、ぜひ手に取って聴いてもらえると嬉しいです。