スズキサトシ(@sasa_rhythm)です!
マーシーソロのデビュー作品にして、最高傑作とも言えるアルバム『夏のぬけがら』。
ブルーハーツでは見せないノスタルジックな表情が顔を覗かせ、バンドとは違った角度で心をえぐって来る名作と言えます。
僕も昔そうだったのでよく分かるのですが、ブルーハーツは大好きだけど、マーシーの声は苦手って人、多いんですよね。
しかしそんな人こそ聞いてもらいたいのが本作。
マーシーの声が嫌いだった僕が、なにげなしにこのアルバムを聴いたことで一変し、むしろヒロトよりマーシーの声が好きになってしまったほど。
というかバンドになるとマーシーは歌い方を変えてるんですよね。
ブルーハーツではあえて思いっきりがなることで、ヒロトの声と全く違う印象を与え、アルバムに色付けをしてるんですよ。
前バンドの『THE BREKERS』をyoutubeで聴いてもらうと分かるのですが、むしろ、がならないのがマーシーの普通の歌い方なんですよね。
同アルバムも、ブルーハーツとは違う、本来の歌い方が聴けます。
話を戻しまして、アルバムの楽曲はまさに珠玉の名曲揃い。
マーシーは四季の中で一番好きなのが夏なのですが、まさにそれが素直に出ていて、美しい風景描写は涙無しには聴けません。
そしてアルバムに参加してる面々も超絶豪華。
先に書いたブレイカーズ時代の盟友「篠原太郎」、現コレクターズベーシスト「JEFF」、日本のボブディランこと「友部正人」、後に共にハイロウズを結成する「白井幹夫」などなど、全て書ききれないですが盛りだくさん。
ということで早速楽曲解説に入っていきましょう。
夏のぬけがら 楽曲解説
夏が来て僕等
作詞・作曲/真島昌利
アルバムの冒頭に相応しい、夏をテーマにした一曲。
小平で育ったマーシーですが、実際の思い出を歌詞に散りばめているように思えます。
ソロ作品というのもあり、詩人マーシー全開の世界観。
夏草に伸びた 給水塔の影を見ていた
という一節が、リアルな光景が眼前に浮かび大好きです。
クレヨン
作詞・作曲/真島昌利
クレヨンというテーマから秀逸ですし、その表現も抽象的なのにリアルという、すざまじい歌詞。
先の『夏が来て僕等』もそうですが、少年期・幼年期の思い出がベースになってる気がします。
全曲通して言えることですけども、白井さんのキーボードがサウンドの要になってますよね。
ちなみにハイロウズ時代の会報「FAN-JET」で白井さんが、自分がキーボードで食って行けるという自信を得たのは、『夏のぬけがら』であった、と語っています。
さよならビリー・ザ・キッド
作詞・作曲/真島昌利
友人に、アメリカ西部開拓時代の伝説的人物『ビリー・ザ・キッド』を重ねたような一曲。
冒頭で「21で結婚して、27でもう疲れて」とありますが、ビリーが21で亡くなっているため、21でかけている感じです。
ただ歌詞で言うところの友人が、実際に存在したのかは不明。
架空の人物かもしれませんし、それは本人の溝知るところ。
曲中のハーモニカは友部さんが吹いており、切ない響きがたまりません。
風のオートバイ
作詞・作曲/真島昌利
同アルバムではオートバイ関連の曲が2曲収録されており、そのうちの一つ。
美しいピアノ弾き語りで始まる感じが、冒頭から心をグッと掴まれる名曲です。
4曲目にして初めてエレキギターも登場し、サビ前から入ってきて、音を唸らせている感じがたまりませんね。
小犬のプルー
作詞:林権三郎、作曲:柳沢剛、編曲:白井幹夫
アルバム唯一のカバー曲。
もともとはNHKみんなのうたで「本田路津子」さんにより歌われていました。
1972年に初めて同番組で紹介されたようで、マーシーが10歳頃ですから、まさに少年時代の思い出深い一曲というところでしょう。
経緯は分かりませんが、曲調や歌詞的にもアルバムの雰囲気のマッチするので、カバーするに至ったのではないでしょうか。
地球の一番はげた場所
作詞・作曲/友部正人
アルバムにも参加している、友部正人さんからの提供曲。
ちなみに友部さんとマーシーが交友を持つようになったのは、ブルーハーツの『青空』がきっかけ。
同曲を聴いた友部さんが、「日本にこんな良い曲を作る人がいるとは」と衝撃を受けて、コンタクトを取ったとか。
憧れの人を曲で動かす、マーシーのすざまじさを伝えるエピソードですね。
後にライブのみではありますが、友部さん自身もセルフカバーしており、『はじめぼくはひとりだった』というライブアルバムに収録されています。
オートバイ
作詞・作曲/真島昌利
オートバイソングの2曲目。
クロマニヨンズになってからも『オートバイと皮ジャンパーとカレー』など、オートバイをテーマにした曲を作ってますが、この頃の曲の方が圧倒的にリアル。
何か感じずにはいられない美しい言葉が連なり、アコースティックなアレンジも相まって夢見心地に連れられていってしまいます。
00年頃に友部さんと一緒にやったライブで歌われており、マーシー自身も気に入っていることが分かりますね。
アンダルシアに憧れて
作詞・作曲/真島昌利
元々はブレイカーズ時代に演奏されていた一曲。
ソロバージョンも良いには良いのですが、この曲はブレイカーズverが至高。
このアンダルシアは、悪い意味で音が綺麗にまとまりすぎているんですよね。
ミックスの問題と言いますか。
ベースラインもブレイカーズ時代のような暴れるようなアレンジの方が、断然カッコイイです。
花小金井ブレイクダウン
作詞・作曲/真島昌利
目立たない曲ではありますが、同アルバムでは『ルーレット』と甲乙つけ難い大好きな一曲。
花小金井で育ったマーシーらしい、同地をテーマにした内容です。
「ブレイクダウン」は複数の意味がありますが、ここでの意味は「衰弱・消耗」でしょう。
花小金井で色んな苦悩もありながらも生きている日々について歌っており、妙に切なくなってきます。
「夏はうずくまっていた」「春は酔っぱらっていた」という擬人表現が、マーシーにしかできないような表現でたまりません。
カローラに乗って
作詞・作曲/真島昌利
タイトル通り、トヨタの有名な乗用車「カローラ」をテーマにした一曲。
確かマーシーの父親がカローラに乗っていて、借りてよく運転していたと何かで読んだ記憶が。
3rdソロアルバム『RAW LIFE』にも「ドライブしようよ」という曲が収録されているように、ドライブ好きなマーシーらしい曲ですね。
夕焼け多摩川
作詞・作曲/真島昌利
「多摩川」とあるように、多摩近郊で育ったマーシーらしいテーマ性の一曲。
抽象的な歌詞ですが、多摩川を眺めながら色々と考えている様子を、描いているといったところでしょうか。
歌詞の量は多くないのに、切ないメロディも相まって色々なことを伝えてくれる内容ですね。
ルーレット
作詞・作曲/真島昌利
アルバムのハイライトと言える、マーシーソロにおいても屈指の名曲。
友情をテーマにした一曲で、諸説ありますが、個人的にはブレイカーズのリードギターだった、杉浦さんのことだと思いたいです。
僕がマーシーにハマったきっかけがまさにこの曲で、なにげなしにアルバムを繰り返し聞いていたら、ある瞬間に「ルーレット」が大好きになったんですよね。
ルーレット回るように 毎日が過ぎて行くんだ 何にどれだけ賭けようか 友だち今がその時だ
というサビの歌詞が急に胸に突き刺さり、歌の素晴らしさ、マーシーの声の良さを痛感したのです。
「【アルバムレビュー】夏のぬけがら/真島昌利」まとめ
マーシーソロの大名盤『夏のぬけがら』の紹介でした。
改めて聴いてみると、珠玉の名盤であることがよく分かります。
マーシーの高い文学性は多くのミュージシャンを惹きつけており、有名なところで言うと、スピッツの草野マサムネ、森山直太朗、ミスチルの桜井なんかがマーシーの大ファン。
近年だとamazarasiなんかもそうですね。
特に草野マサムネは、世に存在するアルバムで一番好きなアルバムに『夏のぬけがら』を挙げており、どれだけマーシーを敬愛してるか分かります。
話を戻しまして、ブルーハーツ・ハイロウズ・クロマニヨンズなど、バンドばかり聴いていると、大半の人は耳に馴染めないアコースティックな音色の「夏のぬけがら」。
その魅力は一聴では分からずということで、まずは騙されたと思って3回、5回、10回と繰り返し聴いてみて下さい。
きっとどこかの瞬間で、マーシーの良さに気づく瞬間があるはず。