かなり前から読みたいと思いつつも、廃盤故の高額な中古相場で手に入れられなかった『パブロック革命』を読みました。
結論から言うと、数少ないパブロック関連書籍の中でも群を抜いて濃い内容であり、パブロックひいてはロックの歴史書としても重要な位置を占めていると言っても過言では無いように思えます。
とはいえ、中身が濃すぎて相当にマニアックな域に達してるので、ある程度パブロックを知ってる人じゃないとオススメできませんね。
- パブロックが大好き
- 60-70年台のロックを普段から聴き込んでいる
では詳しいレビューに入っていきましょう。
パブ・ロック革命
あらすじ
冒頭に書いたように「パブロックの歴史書」という表現が最適な内容であり、おそらく世界で唯一かつ、一番詳しくパブロックを紐解いています。
俗に言う「フィルモア・パイプ」から始まり、パブロックシーンの栄枯衰退が、その裏側にいた人物まで含めて詳細に語られるというもの。
随所に当時を知る人物のインタビューもふんだんに挟まれ、まさに生の声を聴ける内容。
ざっくりとした本の流れとしてはこんな感じ。
投資家の暗躍
↓
フィルモア・パイプ
↓
パブロックの隆盛
↓
その後
特徴・感想
異様な程深く掘り下げられたパブロックの歴史
まず第一にこの本を読めば、パブロックについて知らない事は無いと言ってもおかしく無いほど、全てが詳細に綴られています。
それ故にあまりにマニアックな領域まで行きすぎて、パブロックをこれから聴くという人は読まない方が良いです。
恐らくワケが分からなくなります(笑)
最初に「投資家の暗躍」から始まり、フィルモア・パイプに至るまでが描かれるんですが、膨大な人物が入り乱れ、出来事が詳細に語られるので、正直土地勘も無い日本人の自分では最初の方はちょっと読むのが大変でした・・・。
その後に「ブリンズリー・シュウォーツ」はじめ、バンドが登場してからは楽しく読めたのですが。
さらに本書を玄人向けにしている要素としては、主たるパブロックアーティスト以外は説明が省かれたりしてること。
シュウォーツの家にザ・バンドが訪れるくだりがあるのですが、ザ・バンドのメンバーを全員知ってるレベルじゃないと物語の理解ができないと思いました(汗)
あと知ってないと意味が分からない「ビッグピンク」のジョークもあったり。
幸いにして自分はザ・バンドはここ一年でだいぶ詳しくなったので、このくだりは楽しく読めましたが、登場人物等がよく分からず読み流した部分が何箇所かあります・・・。
自分自身、自信を持ってロックの歴史に精通しているというレベルでは無いので、全部理解しながら読めたわけでは無かったですね。
というわけで、ある程度パブロックや同時代のロックに詳しい人に向けた本であると言えます。
パブロック系アーティストのざっくりとした経歴が分かる
「ブリンズリー・シュウォーツ」はじめ、「ドクターフィールグッド」「エルヴィス・コステロ」「グレアム・パーカー」「イアン・デューリー」など、それぞれのアーティストがどのようにシーンに出てきたかがよく分かります。
自分の場合はウィルコの「不滅療法」を読んでたので、ドクターフィールグッドのくだりは本書はおさらいのような感じでしたが、他のアーティストと並べて読むことでまた違った視点も見えてきますね。
とくに物語の前半を占めるブリンズリー・シュウォーツの苦労劇および、その後のニック・ロウの話は必読でしょう。
「フィルモア・パイプ」の実態を読むと、何だか妙に恐ろしくなります・・・。
巻末にはディスクレビュー付き
歴史書としての体裁を為しているだけで無く、パブロックアーティストのディスクレビューもふんだんに記載されています。
これからパブロックを聴いていくという人であれば、あえて巻末のディスクレビューから読み、ある程度聴き込んだ後に本編に入っていくのも良いのかなと。
自分も本書で咀嚼しきれなかった部分が多々あるので、聴き込んだのちに改めて読みたいと思ってます。
しかも本書のディスクレビューはアーティストごとに分かれ、代表的なアルバムごとに丁寧なレビューがされてるので非常に読みやすいですね。
「【音楽本レビュー】パブ・ロック革命 / ウィルバーチ」まとめ
ということで、ざざっと「パブロック革命」について紹介して来ました。
再三の繰り返しになりますが、少なくとも入門書としてはオススメ出来ないので、ある程度パブロックを聴いてる向けです。
さらに同時代のアーティストも聴き込んでいるとなお良しというとこでしょう。
単純に一種の喜劇としてもフィルモアパイプは面白いので、ぜひ読んでみて貰いたいですね。
その後のパンクロックへの流れしかり、人間の行動は思わぬところに波及して、予想もしなかった変化を産むと感じますね。
自分も改めてパブロックを聴き込んでいきます。
・・・パブ・ロック革命は絶版なので、代わりにニック・ロウの本を貼っておきます。これもいずれ読みたいですね。