「ロビー・ロバートソン自伝」を読んでからだいぶ経つのですが、あれからザ・バンド熱が高まる一方なので「リヴォン・ヘルム自伝」にも手を出してみました。
ファンにはご承知のように、バンド解散と共に決定的な溝が出来てしまい、二度と交わることの無かったロビーとリヴォン。
異なる視点からザ・バンドの物語を読むことで、色々と感じるものがありましたので、ざざっとレビューしていきたいと思います。
ザ・バンド 軌跡/リヴォン・ヘルム
あらすじ
内容としてはロビーの自伝と視点が違うだけで構成は同じ感じで、リヴォンの生い立ちからザ・バンドとしての栄光の日々、解散後のリヴォンについてというもの。
92年までのリヴォンの半生が描かれてると考えれば分かりやすいですね。
因みに本の発行は1994年。
冒頭のリチャードの追悼式に来なかったエピソードから始まり、随所にロビー非難が見られるのも特徴です(汗)
特徴・感想
リヴォンの音楽的背景や生い立ちが詳細に分かる
まずなんと言ってもリヴォン好きには堪らないほど詳細に、生い立ちから音楽的背景が見れるのが秀逸。
幼い頃から家族で音楽に親しみ、妹とグループを組んで活動し、ロニー・ホーキンスと活動する以前に既に多くの経験を積んでいたのは驚きでした。
そのほかにも「レイ・チャールズのレコードの回転数を落として、ドラムの勉強をしていたエピソード」など、ドラマーにとってのヒントになるようなエピソードも満載です。
リヴォンの視点による、ロビーとの確執の原因
お互いに「あいつが悪い」と言ってるような状況なので、第三者としてはどっちが真実を言ってるのか分かりませんが、少なくともロビーの独断的な傾向は事実だったように思えます。
ラストワルツを画策し、勝手に解散の方向に進ませたのは確実でしょう。
あと気になるザ・バンドの著作権問題についてですが、ロビーの本には「まとまったお金が欲しくて、みんな自ら僕(ロビー)に権利を売った」といったことが書かれてました。
しかしリヴォンによると、「レコードが発売されるとクレジットがロビーに集中していて驚いた」「レコード会社が特定のメンバーに権力を集中させて、良いようにバンドをコントロールするための方法だった」みたいな事が述べられているんですよね。
それに付け加え、「他のメンバー全員の収入を合わせた分より、ロビーの収入が多かった」といったことも述べており、なんだかなあと。
先日公開された映画では、ロビーの本を原作にしているため、当然ながらリヴォンを含めたドラッグ・薬に溺れたメンバーが原因で解散へと向かっていった旨が描かれてますが・・・。
ロビーの強大な影響力で、リヴォンの本で述べられた事への弁解もとい、訂正・修正が行われたように感じるところも。
実際、存命のメンバーであるガースへの現在のインタビューが一切無かったのは、ロビーにとって言われたら都合が悪いことでもあるのかと勘繰ってしまいますね。
リチャード・マニュエルの死について最も詳しい日本語書籍
先ほどもちょっと触れましたが、リチャードの死について日本語で読める最も詳しい本と言っても過言ではないでしょう。
リチャードの死と言えば、ファンにとってはもっとも悲しい出来事であります。
リヴォンによれば「直前まで部屋で映画や音楽の話などをしていて、特段変わった様子は無かった」とのこと。
方やガースにはその日のステージ終わりに、リチャードが急に「二十五年間の良い音楽と友情に感謝する」と言っていたそうで、その日のうちに自分の中で何かを決めていたのかもしれません。
それにリヴォンにこんな一言も漏らしていたそうです。
「リヴォン、自分はダメなんじゃないかと思うことぐらい、人間を傷つけるものはない。そうゆうことを考えはじめたら、大きな深みにはまってしまう。日本でやったあと、こういう場所で演奏していると、自分は堕ちていくんだという感じがする」
「【音楽本レビュー】ザ・バンド 軌跡/リヴォン・ヘルム」まとめ
ということでリヴォンの自伝のまとめでした。
ここまで自分もリヴォンの肩を持つようなスタンスで文章を書いて来ましたが、ギタリストとしてのロビーはもう無茶苦茶に大好きです。
あの咽び泣くようなギタースタイルは唯一無二であり、自分にとって大きな憧れを持つギタリストの一人。
往々にして素晴らしいミュージシャンほど、常人には無い確固たる曲げられない性分みたいなものがあると感じ、ザ・バンドに限らず権力による横行みたいなのは至る所で散見されます。
しかし、そうした部分と「素晴らしい音楽」は別問題であり、僕は素晴らしいギターを弾き、曲を作るロビーは好きなわけです。
最後にこちらのリヴォンの自伝、絶版でプレミア価格になっており簡単に手が出せませんが、読んだ後中古で売るなら何とか買う勇気が出るかも知れません(苦笑)
ザ・バンド好きは絶対に読むべき一冊でしょう。