東京の街にストラングラーズがやって来た。
ピストルズ・クラッシュ・ジャム・ダムドと共に、いわゆる5大ロンドンパンクとしてロック史に名を刻んでいる伝説のバンドだ。
しかしそれらのバンドも、今も活動を続けているのはストラングラーズとダムドのみ。
今回、そんなストラングラーズが27年ぶりに単独来日公演を開催するというのだから、行かない理由は無いと即断し、向かったワケだった。
90年にギター・ボーカルの「ヒュー・コーンウェル」が脱退し、ドラマーもツアーではサポートメンバー。
オリジナルメンバーは、ベースの「ジャック・バーネル」、キーボードの「デイブ・グリーンフィールド」の両名だけだが、「ジョン・スティール」しかいないアニマルズ、「ブルース・フォクストン」しかいないジャムを見ているだけに、2人いるというだけでお腹いっぱいな気分だった。(どうゆう意味だ)
ザ・ストラングラーズ来日
『TSUTAYA-O WEST』について
会場となったのは渋谷の『TSUTAYA O-WEST』 。
イベンターの都合なのか分からないが、「フロム・ザ・ジャム」も向かい側の『duo music Exchange』が会場だったり、この手の来日公演はやたらと渋谷近辺で開催される。
キャパはほぼ『duo』と同程度であったが、先日のジャムよりもかなり混雑していたのは入ってすぐに感じた。
熱心に追っかけているファンなのか分からないが、やたらと外国人も目に入ったり、かなり盛況。
ストラングラーズは誰か一人が強烈に目立っているのではなく、各々が強烈な個性を持っているからこそ、オリジナルメンバー2人でも絶大な吸引力があるのかなと感じた。
ちなみに会場に行ってから気づいたが、ここには2階席があり、VIP用と指定されたところ以外は普通に観覧することができる。
なお一階の後方よりで見たが、2階の端の方で立って見た方が見やすかったのでは、と個人的に思わなくもないので、今後の反省事項としておく。
野獣ストラングラーズ
さてさて、いよいよストラングラーズの登場だ。
当然ながら会場は熱狂の渦へと巻き込まれ、先ほどから何度も例に出して申し訳ないが、フロム・ザ・ジャムやアニマルズとは周りの興奮度合いが違っていた。
僕はパンクの隆盛期には生まれてもいないし、レジェンドと称されるパンクバンドを目にするのは初めて。
ここ数日、クラッシュにどっぷりで、やたらとライブ映像を見漁ってたりしたのもあり、目の前に同じ時代に世界に音を響かせていたストラングラーズがいるという現実に、独特な浮遊感を感じずにはいられなかった。
パンクといえば、とりわけ『初期衝動』と絡めて語られることが多いが、とりわけストラングラーズはその中でも異質の存在。
デビューした時期がパンク~ニューウェーブ期であり、パンクにカテゴライズされた部分もあるが、全員演奏技術がムチャクチャに高く、アレンジも巧みで他のパンクバンドとは、完全に一線を画していた。
個人的にはベースの『ジャン=ジャック・バーネル』が大好きで、ここまで「ベースヒーロー」という言葉が似合うベーシストは中々いない。
一般的な認知・人気で言えばパンクベーシストは『シド・ヴィシャス』が一番高いのは認めざるを得ないが、周りの意見はどうだろうが、僕は『ブルース・フォクストン』よりも、『ポール・シムノン』よりもジャックが好きなのである。
大概において、いわゆるロックにおいては、激しく動き回ったり狂気を見せてこそのパフォーマンスみたいな部分があったりするが、ジャックを見ているとそんなことは関係ないというのを強く感じさせられる。
もちろん、ジャンプしたり体を揺らしたりなどは普通にしているんだけども、それ以外のドンと構えて中腰で弾いてる様が、もう無茶苦茶にカッコいい。
加えて塊のように押し寄せてくる図太いベースサウンドが襲って来るのだから、もうイチコロだ。
そしてバンドの音楽性をより一層豊かにしているのは、やはりキーボーディストの『デイブ・グリーンフィールド』であろう。
クラシックを土壌としながらも、発展的に楽曲に落とし込むセンスは、他のキーボードプレーヤーには無い独自なものがある。
バンドの一番のヒット曲である『Golden Brown』だが、この曲は6/8拍子とリズムにおいてかなり特殊。
言わずもがな、曲の根幹は印象的なハープシコードのリフであり、おそらくリフから発展させていった曲なのは間違いない。
そうした意味では同曲はデイブ無くして生まれなかった曲と言っても過言では無いだろう。
バンドにおいて「天才集団」という言葉は使い古されている感はあるが、ストラングラーズこそ、この言葉がしっくりくる。
セットリストは次の通り。
往年の名曲も幅広く盛り込んだ内容であり、もちろんのこと思う存分楽しめた。
曲が始まった瞬間の観客の歓声の盛り上がりとしては、やはり『Golden Brown』と『No more heroes』が断トツ。
『No more heroes』のイントロの変態的なベースラインは何度聴いてもたまらない。
全てのバンドの共通項であるが、やはり音源よりもライブの方が格段に良く、とくに低音部は音源となるときちんとした環境で聴かないと感じるのが難しいところ。
そのため、ストラングラーズをストラングラーズたらしめるジャックの重低音が真っすぐに聴こえてくるライブこそ、本物の魅力を感じられるのは間違いない。
終演後のステージ
さて、機材について見ていこう。
まず真っ先に気になるのはジャックの後ろに構えていたアンプ。
見慣れない青いスピーカー部が印象的であるが、興奮状態でよく確認しなかったため、肝心のロゴが反射でよく見えない・・・。
とくにエフェクターを使っている様子も無かったので、あのすこぶる太い重低音はベースとアンプによって音作りしているはず。
折を見てもう少し掘り下げて調べていこうかと思う。
そしてデイブのキーボード。
とりわけ日本にはロックキーボーディストが少ないため、ズラリと並ぶキーボードを見る機会も少なく、この重戦車のようなラックを見るだけでも胸が熱くなる。
キーボードにさほど詳しくないため、どれをどのように使い分けているかは定かでは無いが、ぜひキーボードプレーヤーの方は参考にされたし。
なんだかよく分からないが、ラックの上に置かれている白いネズミのフィギュア?が可愛らしい。
ギターボーカルの『バズ・ワーン』のアンプ。
日本では中々お目にかかることが無い「BLACK STAR」の大型アンプがクール。
本国である英国メーカーなため、あちらではむしろメインストリームなアンプなのかもしれない。
ドラムセットは結構標準的。
総じてこの年代のバンドや、影響を受けているドラマーはロータムの位置にライドがあるが、なぜなんだろうかというのが最近の疑問。
引き続き色々と学びを深めていきたい。
機材類はこれで一通りであるが、他の来日アーティストと違い、ギター・ベースを自分で持って退けてしまってたので、きちんと確認できなかったのが無念・・・。
「【ライブレポ】2019.11.05 ザ・ストラングラーズ/TSUTAYA O-WEST」まとめ
まさしく興奮の一夜となったのは言うまでもないだろう。
次の来日があるのかどうかは分からないが、機会があればぜひまた見に行きたいと強く思っている。
そして年が明けて2月には、脱退したギターボーカル『ヒュー・コーンウェル』が来日。
もちろん今回のも涙が出るくらい良かったのだが、やはり『Golden Brown』はヒューの切ない歌唱があってこその部分が大いにあるので、何を差し置いてもヒューの単独公演も見に行きたい。
ぶっちゃけヒューのソロアルバムはまだ1枚も手に取ってもいないが、生の躍動を感じることにライブの意味はある。
曲を知らなくとも、足を運び感じることが大切だと思う所存だ。
ということでストラングラーズともども、もっともっと音楽の深みにハマっていきたいと思わせられた、濃縮された数時間だった。
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