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メンバーのインタビューから紐解く、ブルーハーツの解散理由

1995年6月1日、「ミュージックスクエア」というNHKのラジオ番組で突如発表されたブルーハーツの解散宣言。

 

その衝撃たるや、ファンからすれば日々社会を巡るどんなニュースよりも大きなものであったか、想像に容易いです。

 

日本を代表する一大バンドであったゆえ、一般的な関心も多々集め、スポーツ新聞に根も葉もないことを書かれることも。

 

大方、一般認識としては河ちゃんの宗教問題が解散理由として挙げられますが、本人たちの言葉を紐解くと、到底そうには思えません。

 

本記事ではブルーハーツの解散発表後に刊行された雑誌およびファンクラブ会報に掲載されていた「本人たちの言葉」を元に、ブルーハーツの解散について考察していきたいと思います。

 

結論から言うと明快な理由があるものではありませんが、複数のインタビューで見えてくるものがありますので、ぜひ今一度、一緒に考えてみましょう。

解散に関する参考文献

そもそも解散が表に出たラジオ番組では、番組のパーソナリティもディレクターも全く知らされていない中、終了10分前に突如ヒロトが解散を切り出したため、パーソナリティであった中村貴子氏も慌てふためき、解散の理由に関する情報はほぼ無いも同然。

 

事の真相を考えるに至っては、その後にメンバーが語ったインタビューが唯一の参考するにたる情報源でしょう。

 

今回参照したのは以下の3つの雑誌です。

 

①1995/07/01発行 ブルーハーツ ファンクラブ会報『THE BLUE PARTS』1995年7・9・11月合併号(最終号)

4人個別のインタビュー掲載。

 

会報誌なだけあって、個人ごとに掘り下げた非常に充実した内容。

 

②1995/07/16発行 ロッキンオン・ジャパン 1995年7月号

 

同じく4人個別のインタビュー掲載。

 

編集長の山崎氏が、ニュー・アルバムの音がもっとも早く聞けるということで、5月17日のラジオ収録に立ち会っていたら、突如の解散発表。
急きょインタビューを申し込み、当日のうちに取材を敢行したというもの。

 

山崎氏の熱もこもっており、非常に濃い内容が読めます。

③1995/08/02発行 R&R NewsMaker 1995年8月号

ヒロト・梶くん同時インタビュー二人のみ参加。(理由不明)

 

といった内容。

 

これらのインタビュー内の発言を掘り下げながら、事の真相に迫っていきたいと思います。

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ブルーハーツ解散についての考察

解散に向かう具体的な行動を起こしたのはヒロトである

まず事実として、実際に解散へと向かう行動を起こしたのはヒロト。

 

具体的には②の雑誌で本人の口から語られており、以下のように述べられています。

(ヒロト)「そんで、ほかのメンバーに相談を持ちかけて『僕はもうこのバンド辞めようと思うんだ』って言ったの。で、『どうして?』って言うから、すごい簡単に言えばまあ『違うバンドがやりたいんだ』っていうこと。僕はやっぱバンドが好きなんだ。だけど、違ったメンバーとも演奏してみたいってすごい当たり前のことのように思えたんだよ。そんで言ったの、夜中に(笑)1人ずつに、みんなを集めないで1人ずつ個人的な相談事として乗ってもらったの。」ロッキンオン

マーシーも「煮詰まることが多くなってきたのは事実」と同誌のインタビューで語っているなど、各々そうした以前とは違う雰囲気を感じ取っていたものの、実際に行動に移すまでには至ってませんでした。

 

しかしヒロトはメンバー全員に相談するという具体的な行動を起こしたワケですから、その意識が他の3人とは違っていたことがよく分かります。

 

これについて梶くんは以下のように語っています。

(梶くん)「まあ10年間やってたらやっぱり僕たちもそれぞれ色んなことがあってですね、それぞれの問題として自分の中でそこは解決してきたわけですよね。だけど、そこを一歩超えてそういう風な話がメンバーから口を突いて出たという時点で、もう周りの他のメンバーが何を言ってもしょうがない次元なのではないかという気がしてたんですよ。」ロッキンオン

バンドに限らず当たり前の話ですが、10年間も考え方・熱量が同じ状態を保つなんて不可能で、当然時間が経つにつれ様々な経験をし、人の考えは変わって行きます。

 

スケールが違えど、「会社を辞める」「部活を辞める」など、何かを辞める決心をした人は、口に出す前に死ぬほど考え抜いているわけで、口に出した時点でその決心は確固たるものに。

 

梶くんの言うように、ヒロトが口に出して相談している時点で、もう変わりようのない結論となっているんですよね。

ヒロトが行動に至った理由

バンドの解散というとよく見受けるのは、仲が極端に悪くなり名目上の「音楽性の違い」による解散であるとか、食うや食わずの売れないバンドでは先の見えない生活に見切りを付け就職するなど、とにかく後ろ向きな理由が多いです。

 

もっともブルーハーツはお金の問題で無いのは明白ですが、ヒロトはいかにも彼らしい前向きな理由を語っています。

(ヒロト)「なんか創作意欲が煮詰まったからだとか音楽に対する情熱が失せたからバンド辞めるって言ってるんじゃないんだよ」
「めっちゃくちゃ、やりたいことがもう目の前に山積みんなってるんだよ!でも僕たぶんあっという間にこれから10年経つと思うんだ。で、それをブルーハーツでこなしていく自信がなかったんだ。だけど、僕の中ではめちゃくちゃ面白いことがいっぱいあるんだ」ロッキンオン

このように、とにかく新しいやりたいことが頭の中に浮かんでおり、それを実行したいから辞める、という非常に明るい理由であることがよく分かります。

 

そして『普遍的なブルーハーツの音・雰囲気』が形成されている以上、バンドにこれ以上の広がりを感じられなくなった旨の発言も散見。

(ヒロト)「ブルーハーツの4人が集まった時の空気だとかムードとか、それはもう変えがたいものがあって。そこに僕は一番限界を感じてた」ロッキンオン

 

(ヒロト)「あの4人がね、スタジオでパーッと演ると「リンダリンダ」になっちゃうんだよ。何をやっても(笑)」R&R NewsMaker

これは一度でもオリジナル曲を演奏するバンドをやった経験のある人なら誰しも分かりますが、バンドの音というのは全員でひとつのサウンドを成し、誰かひとりが変わっても完全に同じ物にはなりません。

 

基本的にオリジナル曲のバンドアレンジをしていくとなると、主導するメンバーが各パートの演奏を細部まで考えることは無く、各パートのアレンジは各々のセンスに委ねられる部分がほとんど。

 

個々の人間によって聴いてきた音楽、コピーして沁みついているフレーズなどは全く違いますし、もっと言えばほんのちょっとリズムが違えば、バンドサウンドとしてのニュアンスは大きく変わります。

 

そのためブルーハーツのサウンドは4人のサウンドと同義であり、誰かひとり欠けても同じニュアンスは出せません。

 

そしてヒロトが以下のように語っているように、10年も続け、4人のサウンドが固まっている以上、何を演奏してもブルーハーツサウンドになり、さらにアレンジする前から「こんな感じになるんだろうな」という想像までついてしまうのです。

(ヒロト)「でもやっぱりブルーハーツサウンドって、何をやってもブルーハーツサウンドになるんだよね。そこに1つの一貫性がずーっとあって、あんまり驚かないんだな。」ブルーパーツ

さらに人気だからといって継続することのつまらなさ、も説いています。

(ヒロト)「・・・(中略)この辺で、ジ・エンドっていう区切りをつけるのは勇気がいることなんだけど『ジャングル大帝』だって、『鉄腕アトム』だって、『ブラック・ジャック』だって終わったんだよ。でも、手塚治虫は次から次へと描き続けた。『鉄腕アトム』を最終回にしないでェーていう投書は来たかもしんないよ。でも、死ぬまで『鉄腕アトム』1本だけを描き続けてるマンガ家なんかつまんねえ」ブルーパーツ

人間、得たものを捨てるのが一番怖いものですが、先を恐れず固く決断できるヒロトの心の強さを感じるところ。

本来は解散ではなく、活動休止にするつもりであった

マーシーの口から語られていますが、「解散」と大々的に打ち出すつもりはなく、活動休止にしたかったそう。

(マーシー)「4人で話した時に出たのは・・・『別に言う必要もねえよなあ』って、ダラダラと休止状態のまんまでそれぞれ好きなことをやりゃいいんじゃねえかなって。」ロッキンオン

ではなぜ体裁上、解散としたのは大人の事情があったようで、濁した感じで語られています。

Q.でも、そうしなかった(活動休止しなかった)のはなぜですか?
(マーシー)「・・・(中略)・・・うん、そこでいろいろゴタゴタあったような気もしたなあ、事務所とレコード会社と」ロッキンオン

このように、そもそも解散とする必要性も無いとメンバーは考えていたようですし、契約など様々な要因から、業界の事情で解散と打ち出されたことが想像できます。

 

やはり「解散」と「活動休止」だと、前者の方が重く捉えられますし、本人たちからすればそんな大事にしたくなかったのでしょう。

 

そうゆう意味では、ハイロウズの際に「活動休止」としたのも非常に頷けますね。

 

さらに極めつけには、会報でのマーシーの発言に驚かされます。

Q.もうブルーハーツでライブをやったりとかアルバムを出したりとかはないんですよね?
(マーシー)「いやっ、それは分かんないよ」ブルーパーツ

さらにインタビューはこう続きます。

(マーシー)「・・・(中略)だから、しばらく4人でバラけて好きなことやってみて、また4人でやりたくなったらやろうか、みたいなスタンスだったから。それが5年後か10年後か分からないけどさぁ。」ブルーパーツ

つまりはヒロトからの話もあったことだし、「まずは休んで好きな事やればいいじゃん」みたいな軽さであったことがよく分かります。

 

冒頭にも書いたようにファンからすればブルーハーツの解散となれば、歴史を揺るがす一大事ですが、当人にとってはさほど大きな問題ではないのでしょう。

河ちゃんの宗教問題は解散に関係しているのか?

「ベーシストが幸福の科学にハマったのが原因で解散した」という一般認識がされていますが、上記で挙げた3つのどの雑誌でも、宗教問題が原因であるとは誰も言っていません。

 

先までに取り上げてきたように、「バンドの煮詰まりを感じ、新しいことをやりたくなった」とヒロトが感じたように、何となくの部分が理由であり、明確な事象が原因となっているわけではありません。

Q.それを言われた時に(ヒロトから相談された時に)マーシーの心境としてはどうだったの?
(マーシー)「・・・(中略)まあ、何となくそういう空気を僕は感じてたし、もうそんなに長くはないかなと」
Q.例えばどのようなところから?
(マーシー)「・・・(中略)まあ、いろいろかなあ。うん。だから具体的に『あん時がどうだった』とか『こん時がどうだった』とかっていうことよりも、その現場での瞬間瞬間—」ロッキンオン

マーシーもこのように語っており、具体的に何が理由という事ではなく、多様な要因が重なってバンドの倦怠感を感じていたことが分かります。

 

また、宗教問題と解散について直に尋ねられ、河ちゃん自身の考えも述べられています。

Q.ただそれは(宗教に出会って考え方が180度変わったこと)もちろん今回の解散とはまったく関係ないことでしょう。
(河ちゃん)「どうだろう?僕は関係ない、僕サイドから見たら。でも、ほかの人たちはどういう風に見てるかねえ、それはわからない。でも、多少はあると思う。それはほんとのところはわからない。」ロッキンオン

河ちゃんが「多少はあると思う」と言っており、直接的な原因でないにせよ、マーシーが先に言っていたような空気感の一因になっていたかもしれません。

 

しかし、これだけが原因では無いでしょうし、実際ほんとのところは分かりませんよね。

 

一般認識としてなぜ宗教問題による解散が広まってしまったかを考えると、やはり報道する側としては体のいい理由を求めるので、新聞や週刊誌などのゴシップが、都合の良い理由として宗教問題を矢面に出したからだと感じます。

 

ヒロトも何となくでは記事が成り立たないことをよく分かっており、このような発言も。

Q.なぜ解散という事になったんですか?
(ヒロト)「・・・(中略)正直に答えると”何となく”。・・・つまんないでしょ?(笑)」
「・・・(中略)ホントにまじめに答えると何となくなんだよ。でもそれじゃ記事がつまんないよね(笑)そこでほら、作んなきゃならなくなってくるんだよ、色んな事情を(笑)」ブルーパーツ

結局ブルーハーツはいつ解散したのか?

ブルーハーツの解散に明確な日付は無いし、そもそも日付なんて何の意味も無いと本人達も感じています。

 

ただ、あえて解散の日付を考えるならば、以下の3つが選択肢になる日付に。

・1995/05/17 解散宣言のラジオの収録日
・1995/06/01 ラジオの放送日
・1995/07/10 ラストアルバム『PAN』発売日

これについてヒロトの以下の発言が参考になります。

(ヒロト)「いや・・・やっぱね『PAN』は4人の作業だという認識があるから、僕らの気持ちの中ではこのアルバムのマスタリングが終って、ジャケットが出来上がって、CDになる頃に解散してもいいかなと。」R&R NewsMaker

「CDになる頃」の定義付けが難しいですが、無難に販売日として捉えるならば、当人たちの意志的には7/10が解散日になるのでしょう。

ヒロトがやりたかった面白い事とハイロウズ

ヒロトは「やりたいことが山積みで、面白いことがたくさんある」といった前向きな理由で行動に移した理由を話していますが、その後のハイロウズ結成の流れを考えると疑問が浮かんできます。

 

というのも、ヒロトの言葉をそのまま捉えるならば、やりたいこと・面白いことが浮かんでいるならば、描いていた新しいバンドのイメージもあったでしょうし、ヒロト主導でメンバーを集めて行き、ハイロウズ結成に至るというのが自然な流れに思えます。

 

しかし実際にはマーシーが主導しメンバーを集め、最終的に空いていたボーカルに「暇そうだったから」という理由でヒロトに声をかけ、ハイロウズ結成に至るという。

 

ヒロトが前述のような理由を語りながら、ハイロウズに加入するに至ったかを考えると、マーシー以外は違うメンバーですし、キーボードが入るバンドということもあり、ヒロトが描いていた面白いことが、このバンドならできると感じたのかもしれません。

 

現に、特にハイロウズ初期はハードロックのような激しいサウンドと、意味を無視した歌詞の数々など、ブルーハーツからは到底考えられなかった音楽性であり、そういった意味でとにかくこれまでと違う面白さを、楽しんでいたことが想像できますね。

「メンバーのインタビューから紐解く、ブルーハーツの解散理由」まとめ

結局、明快な理由があるわけではなく、『多様な要因が重なったことでヒロトが脱退を思い立ち、結果的に解散に至った』というまとめ方になるのでしょう。

 

たしかに河ちゃんの宗教問題で片付けるのが都合の良い事情かもしれませんが、それはあまりにも横暴ですし、当人の気持ちは当人にしか分からないわけで、第三者が「あいつのせいで解散した」と片付けるのは、あまりにも強引な結論に思えます。

 

やはりその状況を実際に経験しないと、他人の気持ちを根源的に理解するのは無理ですし、ファンは一聴衆に過ぎないのですから、決まったものを受け止めるほかありません。

 

同じメンバーである梶くんでさえ、以下のような発言をしていますからね。

(梶くん)「まあ、いろんなことは訊いたりしましたけどね。なんかわかったようなわからないような(笑)う~ん・・・それはやっぱりしょうがないですよね、メンバーそれぞれ立場もいろいろ違うし。僕はドラムしか叩いてないと言えばそういうことにもなるし、また曲を作ってる人には違ったことが—いろんな意味で考えがあっただろうし」ロッキンオン

結局、具体的な理由は無い、という身も蓋もない話になってしまいましたが、実際そうなのでしょうがないでしょう。

 

ヒロトの言葉じゃ無いですが、事情を作るわけにもいきませんから。

 

ということで本人たちの言葉を元に、ここまで考察してきましたが、個人個人解釈の違う部分もあるでしょうし、ぜひ気になった方は実際にインタビューを読んでみて欲しいですね。

 

当然、廃盤になっており中古で手に入れるしかないですが、こまめにオークションをチェックするとわりと見つかるので、ぜひどうぞ。

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本記事がブルーハーツの解散を考える一助になったならば幸いです。

 

なお、ブルーハーツの解散宣言のラジオは、同DVDに収録されているので参考までに。

メンバーのインタビューから紐解く、ブルーハーツの解散理由 『動画版』