スズキサトシ(@sasa_rhythm)です!
前作『angel beetle』のツアー終了に伴い、ハイロウズサウンドの要であったキーボード白井さんが脱退。
結局それが解散への大きな引き金となり、『Do!! The★MUSTANG』がハイロウズにとって最後のアルバムとなりました。
ハイロウズとしては唯一の4人編制での作品で、形態としてはブルーハーツ・クロマニヨンズと同様。
いかんせんハイロウズが白井さんありきで始まったというのもあり、キーボードが無いだけで非常に物足りなさを感じます。
ただ「砂鉄」しかり曲自体は素晴らしいものが多く、それゆえにキーボードがあったらさらに良くなってたんだろうな、と思うところ。
マスタリングは前作や「ロブスター」などでも担当した「ボブ・ラディック」の仕事。
しかしこれがまた「ロブスター」に負けず劣らずのキンキンした音合いなんですよねえ(^_^;)
なので長時間繰り返し聞くのはなかなか辛いです。
何はともあれ、キーボードが入り色鮮やかに始まったハイロウズでしたが、最後はシンプルに終了してしまいました。
後のクロマニヨンズにも通ずる4人編制のサウンド、じっくり楽しんでみてください。
Do!! The★MUSTANG 楽曲解説
ゴーン
作詞・作曲/真島昌利
ここでいうところの「ゴーン」とは、除夜の鐘などで鳴らされる、神社の鐘ですね。
ただ全体的な歌詞の統一的なテーマがイマイチ掴めず、唐突にエレキギターが出てきたりするのも謎ですが、細かいことはあまり気にしないようにしましょう(^_^;)
グニャグニャしているそいつはよ そんなに悪くはないんじゃない?
この部分はおそらく鐘のことを言ってるんでしょうけども、「グニャグニャ」という表現がちょうどクロマニヨンズの1stに収録されている「あさくらさんしょ」でも登場。
同じ時期に作られたと考えても不思議ではありませんね。
サウンド的には太いロックサウンドなので、アルバムの始まりにはピッタリ。
砂鉄
作詞・作曲/真島昌利
同アルバムにおいては、間違いなく一番の名曲。
シングルカットもされており、いかにもマーシーらしい詩的な世界が堪能できます。
僕は砂鉄 君は磁石 君のなすがまま
というサビの表現が珠玉。
ここでいうところの「僕と君」という関係は、男女という意味ではありません。
歌詞全体を見るとよく分かるのですが、君というのはすなわち、自分が好きなもの。
「マティスの窓」や「群青のギター」、つまりは絵画や音楽など、マーシーの好きなものが見受けられます。
自分が好きなものには、あらがえないということを言っており、それを「砂鉄」と「磁石」と表現するのが神がっています。
まさに天才詩人マーシー。
ノロノロ
作詞・作曲/甲本ヒロト
意味がよく分からない曲なんですが、同アルバムのヒロト曲では一番好きなんですよねえ。
「行列に並んでいる時」について歌っているように思えます。
七人目 産みたけりゃ その前に まずは 産みな 六人目
意味はともかくとして、Bメロのこの部分のメロディが本当に秀逸。
一瞬で耳残るメロディを産み出すという点においては、天才的としか言いようがありません。
ギターソロの感じも、マーシーらしいロックンロール調でたまりませんね。
荒野はるかに
作詞・作曲/真島昌利
シングルカットもされ、2004年アテネオリンピックの自転車競技のテーマソングにも使用された同曲。
タイトルからも連想できるように、西部劇っぽいイメージの内容です。
出だしの口笛は、マーシーがどうにも吹けなくて、ヒロトが吹いたそうです。
僕も口笛吹けないので、気持ちがよく分かりますね(笑)
ちなみに同曲のPVは、栃木にある「日光ウエスタン村」というところで撮影されたのですが、残念ながら2006年から閉園状態。
廃墟と化していますが、中には入れるっぽいので、怖いものしらずの人はどうぞ(笑)
アネモネ男爵
作詞・作曲/真島昌利
「アネモネ」という花を「男爵」として擬人化したような歌。
アネモネの花言葉は、「はかない恋」「恋の苦しみ」「見捨てられた」「見放された」といった意味があるそうで、歌詞の内容的には後ろ2つの方が近い感じがします。
あまり一般的ではない花を持ってくるセンスが、いかにもマーシーらしく、たまらないところ。
アネモネ男爵 退屈を知ってる 他人のために生きる 退屈を知ってる
というサビの歌詞が象徴的で、世の中の多くの人が好きじゃないこと、すなわち「人のために時間を費やしていること」に警鐘を鳴らす言葉に捉えれますね。
おそらくマーシーが弾いている、簡単なキーボードがところどころ入っており、白井さんも入るイメージで作った曲なんだろうなと思うと、少し悲しくなってきます。
夜の背
作詞・作曲/甲本ヒロト
全体的にボヤーっとしてる感じはありますが、ラブソングなことは確か。
前5曲まではロックバンド的な音合いでしたが、この変から落ち着いたサウンドがいくつか続いていきます。
強く強く 思うだけで ひとつくれる ひとつあける 夜が行ってしまう
「好きな人への思いを強く考えてるだけで、次の日になってしまう」ということなんでしょうけども、それを「夜が行ってしまう」と表現するあたりがヒロトっぽいですね。
アレンジの特殊さも相まってか、ライブでは一度も演奏されませんでした。
ブラジル
作詞・作曲/真島昌利
僕がこの曲を初めて聞いたのは高校生の時で、かったるい曲だなあという印象しか無かったですが、今になり改めて聞いてみると非常に深い歌ということに気づかされます。
1900年代前半、日露戦争による日本の経済悪化により、働き口が大幅に減少。
政府はブラジル移民を促すプロパガンダを打ち出し、多くの日本人が移住したのです。
同曲はまさに移民の視点から歌われており、マーシーが取り上げる題材の深さには感服です。
前作でも『つき指』が太平洋戦争に関したテーマであり、読書好きなマーシーは、この時期戦争系の本を多く読んでことが推測できるところ。
曲調やメロディとしてはあまりピンと来ないですが、意味を理解したうえで聴くと、感じるものがきっとあるはずです。
ソロの部分を三味線(?)で弾いており、古い感じを出そうと凝っているアレンジもポイント。
暴力アラウンド・ザ・クロック
作詞・作曲/真島昌利
『Tigermobile』に収録されてても全く違和感の無い、全くの意味不明な一曲。
色んな単語に「暴力」と付けているだけですね。
曲調としては再びバンドサウンドに戻った感じなので、聴きごたえはありますが、あまりオススメできる曲では無いです。
やはりマーシーは文学的な曲が至高だと、意味不明な曲を聴くと強く感じるところ。
ズートロ
作詞・作曲/甲本ヒロト
「ズートロ」という言葉は、「ずーっとロック」を略したもの、とよく言われます。
歌詞的には「ズートロ」&「語尾がトロ(例:パートロ)」の繰り返しで、あまり深い意味はありません。
アレンジ違いの「ズートロ(69バージョン)」が、シングル「荒野はるかに」のB面に収録。
スパイダー・ホップ
作詞・作曲/甲本ヒロト
ハンモックで休んでいる光景を、蜘蛛(スパイダー)とかけている歌。
全体的に深い意味は無く、スパイダーホップというメロディの心地よさを楽しむ感じでしょうか。
個人的にはあまり好きではありません(^_^;)
クロマニヨンズにも繋がって行きそうなニュアンスを、曲から受けますね
ザリガニ
作詞・作曲/真島昌利
同アルバムのマーシー曲では砂鉄に次ぐ名作。
小さい頃に採っていたザリガニについての思い出を歌にしてる感じですが、この絶妙なシュールさがたまりません。
マーシーが弾く単調なピアノ音も余計に哀愁を誘います。
消えてなくなる ただその事より においさえ消える 事がさみしいよ
この一節が最高で、においさえも無くなると、存在自体が無かったようになり、猛烈にさみしいということが伝わります。
僕も幼い頃、昆虫など飼ってたからよく分かるのですが、においも無くなるといよいよ何も無いという感じが増長され、しんみりするんですよねえ。
ヘッドホン
作詞・作曲/甲本ヒロト
タイトル通り「ヘッドホン」について歌った一曲。
アレンジの感じもちょっと変わっており、あえて音をそぎ落としているような気がします。
オタマジャクシが大気圏を飛び越えた
という一節がヒロトらしく、「オタマジャクシ=音符」のことで、ヘッドホンで自分が楽しむ様を綺麗に表現しているなあと。
スピーカーで聴くのも良いのですが、ヘッドホンで聴くと他の音が一切遮断されるので、より曲に入り込めますよね。
ヘッドホンの良さを感じさせてくれる、名曲ですね。
たつまき親分
作詞・作曲/甲本ヒロト
ミドルテンポな一曲で、アコギの音がやや強調され、激しさを抑えている感じ。
「たつまき親分」というのが何を指しているのかイマイチ分かりませんが、Aメロでは「たつまき親分」のことを言っているのに対し、サビでは「たつまき親分」に対して問いかけています。
友達はできるかな どうかな 恋人はできるかな どうかな
の部分が大好きで、綺麗なメロディと言葉が心地よいですね。
プラプラ
作詞・作曲/甲本ヒロト
これまた意味不明な一曲ですね。
ゆっくりな曲調で、メロディラインも綺麗ですが、歌詞がふわふわしすぎてしっくり来ません。
オルガンの音が微妙に入れられていたり、最後の最後まで、白井さんがいたら出してくれるであろうニュアンスを、少しでも出そうと模索しているのが感じられます。
「【アルバムレビュー】Do!! The★MUSTANG/THE HIGH-LOWS」まとめ
ハイロウズの解散にあたり、マーシーが「(バンドが)活気を失った感じがした」と発言していますが、事実、同アルバムを聴くと、明らかに活気がありません。
再三申し上げているように、ハイロウズサウンドの要は白井さんでした。
前作『angel beetle』の回でも書きましたが、本来の意味でハイロウズのラストアルバムは白井さんが在籍していた『angel beetle』であったと感じます。
本作でもマーシーが簡単なキーボードを入れたり、試行錯誤した感はありますが、当然白井さんの弾くものとは程遠いのは明らか。
白井さんが脱退したのはハイロウズの過酷なライブ本数についていくのが、年齢的にきつかったということで、しょうがないことですね。
ヒロトマーシーとはちょうど一回りほど違う年齢ですし。
ということで史実的な意味合いではハイロウズのラストアルバムとなった『Do!! The★MUSTANG』。
勢いが無いのは明白ですが、自分の耳で確認するという意味でも、聞いておいて欲しいですね。