ミュージシャンズミュージシャンとして知られる、ロック史における偉大なバンドの一つ『ザ・バンド』。
ここ一年半くらいで自分がかなりのめり込んだバンドであり、全オリジナルアルバムも聴きましたし、色々な本も読み漁りました。
ということで種々の得た知識をもとに、これからザ・バンドを聴いてみたいという人に向けて、ザ・バンドを紹介してみようと思った次第です。
ぜひザ・バンドの深みにハマっていくきっかけとなれば幸いです。
①ザ・バンドを知ろう
まずザ・バンドについてですが、1967年から1976年にかけてアメリカで活動したバンドです。
ジャンルとしてはよく「カントリーロック」と言われたりもしますが、ブルース・フォーク的な要素もありますし、スワンプロックとして捉える人もいたりします。
乱暴な説明ですが、所謂激しいロックではなく、大人な深みのあるロックとイメージしてもらうと分かりやすいかも知れません。
次の項で詳しく紹介しますが、メンバー五人のうちドラマーのリヴォンだけがアメリカ人で、あとはカナダ人というのも特徴です。
あとボブ・ディランとの共演でも有名で、エレキ化した直後のディランのバックをやってたり、その流れでディランの提供曲や共作曲があったりします。
②メンバー紹介
次にメンバー紹介に入っていきます。
ロビー・ロバートソン
最初がギタリストでソングライターのロビー・ロバートソン。
代表曲の「ザ・ウェイト」はじめ、バンドの大半の曲を書いています。
ただ実際クレジットとは違うとされてる曲もあったりで、その辺の話をするとバンド内のゴタゴタ話をする必要か出てくるので、まずはこんな形で割愛させていただきます。
ギタープレイの特徴としては、「ピッキングハーモニクスを多用した、咽び泣くようなギターサウンド」が挙げられます。
派手なギターを弾くわけは無く、目立たないけれどサラッと難しいことをやってたりで、中々凄さが伝わりにくい玄人向けのギタリストだったり。
そうゆうワケで「歴史上最も過小評価されている25人のギタリスト」の中で20位に選ばれてたりします。
リヴォン・ヘルム
次がドラマーのリヴォン・ヘルム。
ザ・バンドにはボーカリストが三人もいまして、そのうちの一人がドラマーのリヴォンです。
歌うドラマーの元祖、なんて言われる事もありますし、自分も初めてザ・ウェイトのライブ映像を見た時にあまりのカッコ良さに衝撃を受けました。
ドラマーとしても唯一無二の存在であり、重心の低いどっしりとしたドラムプレイが猛烈に心地良いです。
ロックドラマーによくある、クラッシュシンバル・オープンハイハットの多用が一切無く、基本の三点とタムをメインに使った独特なグルーヴ感が魅力。
個人的にザ・バンドのメンバーの中だと一番好きな のがリヴォンです。
リック・ダンコ
続いてベーシストのリック・ダンコ。
バンドにおける二人目のボーカリストでもあります。
とくに後述するアルバム『南十字星』における「同じことさ!」はリックの名演とされていますね。
ベーシストとしての特徴に、フレットレスベースを操るという事が挙げられ、表情のあるベースを弾くのが魅力的です。
跳ねるようなベースラインが猛烈にたまりません。
リチャード・マニュエル
四人目はピアノのリチャード・マニュエル。
ザ・バンドの三人目のボーカリストであり、メンバー内ではリチャードがリードボーカリストという認識をされていました。
代表曲であるアイシャルビーリリースドにおける、ボーカルはファルセットによる名唱と言われてます。
むしろファルセットを使ってない曲の方が多いのですが、総じてリチャードのボーカルにはどこか悲しみが漂っている印象が感じられ、そこが大きな魅力です。
ガース・ハドソン
最後が天才プレイヤーとされる、キーボードのガースハドソン。
メンバーの中で唯一正式な音楽教育を受けており、クラシックの素養もある人物です。
リヴォン・ヘルムが「バッハとブルースを同じ次元で理解をしている」と評するほど、多様な音楽を自由自在に操る天才肌であり、その驚異のプレーは代表曲の一つ「チェスト・フィーバー」などで聴くことができます。
③おすすめのアルバム
ミュージック・フロム・ビッグピンク
次に必聴のアルバムを紹介していきますが、まず真っ先に紹介するのは1st「ミュージックフロムビッグピンク」。
サイケデリックムーブメント真っ盛りの中に発売されたアルバムながら、時流を無視した黒人音楽とカントリーなどの白人音楽の融合した、渋い内容のアルバムとなっています。
当時の流行の長いギターソロは一切無く、派手なアレンジも無い内容は、まさに当時からすると異色そのものでした。
このアルバムには多くの逸話があり、ビックピンクを聴いたクラプトンがあまりに衝撃を受けてクリームを解散させたり、ジョージハリスンが「これは傑作だから絶対に聞け」と周囲に配ってたりするほど。
アルバムの中から最初に聴いてもらいたい曲をピックアップするならば、「ザ・ウェイト」「アイシャルビーリリースド 」「怒りの涙」あたりを挙げておきます。
ザ・バンド
続いて1stと甲乙つけ難い大名盤の2nd「ザ・バンド」。
通称、「ブラウンアルバム」と呼ばれています。
1stは壮大でスローテンポな曲が中心でしたが、2ndは引き締まったタイトなサウンドが特徴で、とくにシングルカットもされた「クリプル・クリーク」はファンキーな名曲。
あとこのアルバムの必聴ナンバーを挙げますと、「オールド・ディキシー・ダウン」「ラグ・ママ・ラグ」「アンフェイスフル・サーヴァント」あたりを挙げておきます。
南十字星
最後がザ・バンド後期の大名盤「南十字星」。
ザ・バンドにはライブ盤を除くオリジナルアルバムが7枚あり、本アルバムは6枚目のアルバムです。
2ndアルバムを出して以降、バンド内で様々なゴタゴタが生じ、それに伴い暫くの間、ザ・バンドらしいアルバムが作れて無かったんですね。
しかし解散も間際にして作り上げられた素晴らしいアルバムがこの南十字星で、ベストに挙げる人も多いアルバムです。
良い曲ばかりが詰まってるんですが、自分の好みも入ってますが「オフェリア」「ホーボージャングル」「同じことさ!」「ジュピターの谷」あたりを是非聴いてみて欲しいです。
④次の段階
ラストワルツ
上で挙げたオリジナルアルバムを聴いて、さらに聴き込んでいきたいという人に向けた次の段階。
まずはじめはザ・バンドの解散ライブにしてロック映画の金字塔である「ラストワルツ」を挙げさせて頂きます。
ネクストステップとは言いましたが、むしろラストワルツから聴いてみる、もとい見てみるのも全然アリだと感じます。
「タクシードライバー」等々で有名なマーティン店スコセッシが手掛けた映画で、音楽が素晴らしいのは勿論のこと、映像も圧倒的に美しいです。
自分自身もザ・バンドにのめり込むきっかけが、ライブ映像の「ザ・ウェイト」でリヴォンのカッコ良さにノックアウトされたから、だったりするので映像から入るのも良い選択肢だと。
クラプトン、ニールヤング、リンゴスター 等々、ゲストも多数出演してるお祭りみたいなイベントなので、そうゆう意味でも見やすさもあると感じます。
ロックオヴエイジズ
次はザ・バンドのライブ盤の名盤と言われる「ロック・オブ・エイジズ」。
2枚組のボリューミーな内容で、ディランとの共演曲も収録されてたりします。
このアルバムはそこまででは無いのですが、とくにラストワルツなんかはそうですが、ライブ盤になるとロビーのギターがクランチ気味の歪みでかなりロックンロールしてるのがカッコ良いんですよね。
あとスタジオ盤だと大人しめだったナンバーも、ライブになると総じて荒々しいアレンジになったりするので、そこも聴きどころです。
本アルバムでは「アンフェイスフル・サーヴァント」が好例でしょう。
ライヴ・イン・ワシントンD.C. 1976
最後は所謂発掘ものの音源で、2014年になってから発売されたライブ盤。
ラストワルツに向かってる頃のライブですが、この音源は何と言ってもリチャードの調子が良い。
「ザ・バンドのライブの出来はリチャード次第」とリヴォンが語っており、リチャードの調子の良いこの音源では極上のザ・バンドサウンドが堪能できます。
ラストワルツではリチャードの調子が悪く、ほとんど音源がピックアップされなかったので、「Tears Of Rage」や「King Harvest」、「The Shape I’m in」、「Chest Fever」で熱唱を聞かせてくれているだけで、素晴らしい価値のある音源です。
リードボーカリスト「リチャード・マニュエル」を体感するにはうってつけの音源ですね。
⑤より楽しむためには
誰がボーカルを取っている曲かを押さえて聴く
さらに楽しんでザ・バンドを聴くためには、ということですが、「誰がボーカルを取っている曲か押さえた上で聴く」というのが一つ挙げられるでしょう。
ザ・バンドの最たる特徴の一つに、単独でバンドのボーカリストを務められるだけの技量を持つボーカリストが三人もいるという点があります。
その為、この曲はリヴォン、この曲はリック、この曲はリチャード、というようにボーカリストに着目して楽曲を聴いていくとさらなる発見があるでしょう。