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【アルバムレビュー】ブギ連/ブギ連

2019年4月に結成が発表された、甲本ヒロトと内田勘太郎さんのユニット『ブギ連』。

 

内田さんは言わずと知れた大阪のブルースバンド『憂歌団』のギタリストであり、大袈裟では無く日本のブルースギタリストではぶっちぎりのトップを走っている。

 

単にギタリストと言えども実に多種多様なスタイルがあるが、とくに内田さんのスライドギターは次元を超越しているレベルだ。


かく言うヒロトも兼ねてからのブルース好きとしてよく知られており、ハーモニカプレイにはリトル・ウォルターを筆頭としたブルース・ハーピストの影響が色濃い。

 

他にも名前を挙げていくとJ・ガイルズバンドの「マジック・ディック」や、ドクターフィールグッドの「リー・ブリロー」などなど多様なルーツがあるが、本題から逸れるしキリが無いのでこの辺にしておく。

 

ヒロトがマーシー意外と組んだバンド(ユニット)としては、ブルーハーツ休止期の『ヒューストンズ』のみであるが、同バンドは種々の事情によりデビューができなかった。

 

そのため公式な形としてヒロトが別バンドで活動するのは、ブルーハーツがデビューした1987年以降、今回が初めてなのである。

 

ブルースユニットおよびヒロトの初めての対外的なバンド活動ということで、特異性が盛りだくさんなブギ連の1stアルバムをレビューして行こう。

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【アルバムレビュー】ブギ連/ブギ連

あさってベイビイ

冒頭を飾るのは勘太郎さん作詞の『あさってベイビイ』。

 

ちなみにこの曲に限らず、ブギ連の曲には基本的に元ネタがあり、こちらは「Big Maceo Merriweather/Worried Life Blues(ビッグ・メイシオ ウォリード・ライフ・ブルース)」が下地になっている。

 

元来的にブルースというものは、アメリカ南部の黒人が互いに影響しあいながら歌い継がれて来た部分があり、人によって歌詞を変えたりなんてしょっちゅうだし、作者不明という曲も多かったり。

 

そうした意味で完全な0からでは無く、発展的に作っていくスタンスはすごくブルース的だなと個人的には思えて、そこが良い。

 

さらに付け加えると、ブルースの一番基本的なフォーマットの12小節では無く、8小節の曲を最初に持ってくるのがまた渋いのである。

ブギ連

お次はバンド名にもなっている、表題曲の『ブギ連』。

 

元ネタは、泥臭いブルースマンの代表格であり、ブルースにおける神の一人とも言えるジョン・リー・フッカーの「Boogie Chillun(ブギ・チレン)」。


リズムが完全にそのまんまであるが、そこに乗ってくるフワッとしたヒロトの歌詞がまた良い。

 

個人的意見ではあるが、近年のクロマニヨンズの曲よりも、よっぽど言葉に深みを感じるところである。

腹のほう

3曲目に登場するのは『腹のほう』であるが、タイトルからは想像が付かないが、歌詞の細かい部分を見ると微妙に蛇のような雰囲気が出ている。

 

元ネタはブルースレジェンドと言っていい、マディウォーターズの「I Can’t Be Satisfied」。


なおストーンズも2ndアルバムでカバーしており、こちらも合わせて聴いておきたい。


バッドマンブルース

タイトルから分かるように、バッドマンに着想があるマイナーブルース曲である『バッドマンブルース』。

 

インタビューによると、リトル・ウォルターの曲をマイナーチェンジして弄り回してできた曲だそう。

 

ブルースとはかけ離れたアニメを結び付ける発想の自由さが、流石ヒロトと感じさせる。

 

ここまで色々と書いて来てるが、僕自身ブルースにめちゃくちゃ詳しいとは言えなかった為、そのウォルターの曲は分からずじまい。

 

いつか気づいたら追記する予定ですので、お待ちいただきたい。

軽はずみの恋

お次は『軽はずみの恋』ですが、こちらブルースの女王ことベッシー・スミスの「Careless Love Blues(ケアレス・ラブ・ブルース)」が元ネタ。

 

原題のタイトルの意訳が「軽はずみの恋」であり、主題としてはそのまんまですが、乗っている歌詞はヒロト独自のもの。

 

これまた特殊なブルースで16小節という特異な形式であり、変則的な形式を平然とチョイスしてるあたりも、2人のブルース愛が伝わってくる。

 

なおベッシー・スミスには伝記映画があり、以下の記事で紹介しているので参考までに。

『本物の叫び』おすすめのブルース映画

闇に無

かなりドロドロとした、ゴリゴリのブルースである「闇に無」。

 

これも元ネタがありそうな雰囲気ムンムンだが、残念ながら分からず。

 

イントロ部に微妙に「Boom Boom」的なフレーズがあるから、ジョンリーフッカーあたりが怪しい。

 

この曲だけ毛色が違い、エロティックな感じの雰囲気が出ているが、フワッとしてるし、何を言いたいかは聴いた人の解釈次第か。

ナマズ気取り

元々ブルースには動物の名前がよく出てくるため、それを踏襲し意図的に生物をテーマにしている曲。

 

そのまんまナマズが主題になっていますが、元ネタはブルースの古典的1曲と言える、ロバート・ペットウェイの「Catfish Blues」。

 

ちなみに元ネタのキャットフィッシュは、正式名称アメリカナマズ。

 

ヒロトの強いリスペクトが感じられる内容と言える。

誰かが見てる

全曲ブルースはブルースなんだが、ここまで見てきた中ではわりとポップなニュアンスのある『誰かが見てる』。

 

これも元ネタが分からずで悔しいので、もっとブルースを勉強しよう。

 

それはさておき、この曲は勘太郎さんの作詞だが、個人的に一番好き。

 

「人は常に誰かから見られており、自分からも見られている」という視点に深みを感じる。

ヘビが中まで

元ネタはジョン・ブリムの「リトル・スネーク」である『ヘビが中まで』だが、主題もそうだし曲調もほぼ歌詞乗っ換えといった様相。

 

ただ、敢えてそうしているのは間違い無いし、そもそもブルースはこうやって歌い継がれて行くものだ。

 

ここで言うヘビが生物としてのものか、何かを暗喩しているかは定かでは無いが、絶妙な雰囲気を醸し出している一曲である。

ブルースがなぜ

勘太郎さん作詞のブルース愛爆発の一曲。

 

「エルモアが言うには~」「マディーに訊いてくれ」のくだりが堪らず、とくに『ブルースの全てはマディが知っている』的な主張は心に刺さる。

 

「土砂ぶりだ~」の後からの激し目のギターは、多分雨の情景を表現しているようにも思えるところ。

オイラ悶絶

この曲だけ、がなり気味のヒロトのボーカルが聴けるが、悶絶を表現してのことだろう。

 

ハードなスライドギターも入ってたりと、全体的に激し目であり、アメリカ南部で日夜繰り広げられていたかのような、セッション的な光景が目に浮かぶ。

 

何の歌かはっきりはしないが、夢か現実かはっきりしない出来事、はたまた実際に見た夢の唄なのだろうか。

道がぢるいけえ気ィつけて行かれえ

先の「オイラ悶絶」と共にボーナストラックという立ち位置ではあるものの、アルバムを締めくくる一曲である『道がぢるいけえ気ィつけて行かれえ』。

 

歌詞がタイトルの言葉と「ほなな」しか無い衝撃の内容であるが、同じ言葉をひたすら繰り返すと言うのが、すごくブルース的である。

 

タイトルは岡山弁であり、意味は「道が(雨で)ぬかるんでいるから、気を付けて出かけなさい」といった意味。

 

拡大的な解釈になるが、「ブギ連でブルースに興味を持ったらなら、ブルースの世界はドロドロとした世界だから気を付けて音楽を掘って行けよ」的な風に捉えても、違和感は無いのかなと思ったり。

「【アルバムレビュー】ブギ連/ブギ連」まとめ

ということで以上がレビューになるが、控えめに行って近年のクロマニヨンズより、よっぽど良い、というか次元の違う素晴らしい音楽作品であると断言できる。

 

現に僕もブギ連の初ライブに足を運んだが、明らかに会場の盛り上がりが異様であり、ヒロトが思わずモニターの音量を上げて欲しいと音響に言うほどであった。

 

ファンの熱狂ぶりを目の当たりにすると、僕個人の意見だけでなく、大なり小なりほとんどの人が同じことを感じているのかもしれない。

 

同作の良さについて付け加えるならば、スライドバーがギターにあたる「コツッ」とした音までそのまんま残している点だ。

 

現代的な録音ならば、このような音はノイズとして捉えられがちで、修正を施し聴こえないようにしたりするものだが、こうしたありのままの音を入れることで、本当のブルースに仕上がっていると言える。

 

ブギ連を通して初めてブルースに触れた人も多いと思うが、この機会に少しでもルーツとしてのブルースに触れてみると、より一層音楽の楽しみが増すと断言できるので、ぜひトライいただきたい。

 

ちなみに最初の入り口としては、土着的なゴリゴリのブルースより、クラプトンやストーンズといった白人ブルースが、耳馴染みが良くオススメなので、興味があれば以下の曲を色々と聴いてみてはどうだろうか。