スズキサトシ(@sasa_rhythm)です!
ブルーハーツ後期の大名盤と言われる、『STICK OUT』と『DUG OUT』、通称・凸凹。
今回はそのうちスロー・ミドルテンポな曲中心に集めた、凹の方を紹介していきましょう。
落ち着いた曲ばかりなので、これからブルーハーツを聴いていくという人は、少しとっつきにくさがあるかもしれません。
しかしながら個人的には凸と凹は甲乙つけがたい大名盤。
特にマーシー曲が尋常ではないほど映えわたっているんですよね。
ソロアルバム『夏のぬけがら』に代表されるように、マーシーの詩的でノスタルジックな世界観はまさに圧巻。
マーシー一人で弾き語りしても、それだけで無茶苦茶カッコイイ曲ばかりです。
『青空』といったような、文学味溢れる作品が好きな人は、間違いなく気に入るアルバムと言えますね。
もちろんヒロト曲も素晴らしく、感動というよりは楽し気な曲がほとんどなものの、「夕暮れ」といった大ヒットナンバーも収録。
主にマーシー曲ではありますが、アルバム全体的に「夏」や「風」といった言葉も多く、夏の夜更けにリラックスして聴いたら気持ち良いこと間違いなしです。
では楽曲紹介に入っていきましょう。
DUG OUT 楽曲解説
手紙
作詞・作曲/真島昌利
まさにアルバムの冒頭を飾るに相応しい、詩人マーシーを体現するかのような、壮大な一曲。
歌詞はこの時期のマーシーらしい、まさに難解そのもの。
冒頭にイギリスの有名小説家『ヴァージニア・ウルフ』が出てきたりしますが、特に彼女の作品と関連があるわけでもないですし、はっきりしないことが多いです。
しかし意味不明でも感動してしまう、といういつものヒロトマーシーマジックでして、綺麗なメロディや、ストリングスの壮大なアレンジといい、聴くたびにジーンと来てしまうんですよね。
マーシーがこの詩をどう考えたのか想像がつきませんが、美しい歌だと心から思えます。
緑のハッパ
作詞・作曲/甲本ヒロト
タイトルだけ見ると、危ない薬物系の歌とも取れますが、全体的になんのことなのかよく分からないですね。
正直『DUG OUT』のヒロト曲は「夕暮れ」以外、うーん、といった感じですが、楽しめる曲になっているのは確か。
愉快なリズムを楽しみながら、楽しく聞きましょう。
トーチソング
作詞・作曲/真島昌利
手紙に引き続き、こんな曲が来たら、誰しもマーシーの神がかりぶりを感じるでしょう。
マーシーの詩的さというのは、色んな尺度があるでしょうけども、「トーチソング」は得も言えぬ擬人表現が最高ですよね。
「嘘でふくれた風船」「ポストが歌うトーチソング」「夜が聴きにくる」といった、一節だけでゾクゾクさせられるものが満載。
ミュージシャンでもこの曲を好きな人は多く、有名なところでは『踊ろうマチルダ』がカバーしてたり。
雨上がり
作詞・作曲/真島昌利
タイトルどおり「雨上がり」について歌っている曲ですが、マーシーらしい夏の名曲。
マーシーが四季の中で一番好きなのは、言わずもがな夏ですが、日本のミュージシャンで夏というものを描かせてマーシーの右に出る人はいませんよ。
それだけじゃないよ空には 一枚切りの水彩画が 風の筆さばきにじんでる
という一節が珠玉で、この情景描写は常人にはできないと、常々感じます。
年をとろう
作詞・作曲/真島昌利
同アルバム唯一のマーシーボーカル曲。
イントロのアルペジオが印象的で、思わずアコギで弾きたくなりますよね。
普通の人の視点では、「老いていくこと」を後ろ向きに捉えがちですが、マーシーはあくまでも前向きに捉えようとしているのが、歌詞から分かります。
同アルバムが発売された頃、マーシーはちょうど30歳という感じでしたので、色々と思うことがあったんじゃないかと、推測できますね。
夜の盗賊団
作詞・作曲/夜の盗賊団
あまり賛同する人はいませんが、ブルーハーツ時代のマーシー曲で僕が一番好きなのが、「夜の盗賊団」。
たぶんマーシーの実際の夏の思い出を歌にしてると思うのですが、「これはマーシーにしか書けない」といった、美しい言葉が本当にたまらないんですよね。
シンプルなコード進行に乗せた美しいメロディで、こんな歌詞を歌われたらもうたまりませんよ。
死ぬまでにこの曲をマーシーボーカルで聴くのが僕の夢なんですよね(笑)
とくにラストでマーシーがアドリブでソロを弾きながら、シャウトが入ってくるとこは何度聴いても泣けるのです。
キング・オブ・ルーキー
作詞・作曲/甲本ヒロト
ヒロトが弟について歌った一曲。
ちなみに弟は俳優として有名な「甲本雅裕」。
兄弟揃って表現者として成功してるとは、いったいどんな兄弟なんでしょうか(^_^;)
良い曲かどうかと言われれば、なんとも難しいところではありますが、サウンドを楽しむという点で良いのではないでしょうか。
甲本ヒロトの弟は俳優の甲本雅裕!弟に向けた曲を紐解いて見えた思いムチとマント
作詞・作曲/甲本ヒロト
この曲だけに限った話ではないですが、同アルバムのヒロト曲は一見意味が分からないのが多いですね(^_^;)
ただ同曲に関してはよくよく歌詞を掘り下げて見て行くと、「恋愛ソング」であると感じます。
ムチとマントは、闘牛士が使うものをイメージしているんでしょうけども、それになぞらえて、好きな女の子との駆け引きの様を描いていると感じるところ。
恋をするとき 素敵なことは 何もいらないと 本気で思えること
という一節がたまりません。
宝もの
作詞・作曲/河口純之助
アルバム唯一の河ちゃん曲。
この時期は既に幸福の科学に傾倒していた時期ではありますが、この曲に宗教色は無く、純粋に良い曲です。
「君と僕の宝もの」と歌われているように、テーマは恋愛。
素直な河ちゃんの言葉と、優しい声がピッタリとマッチする名曲ですね。
夕暮れ
作詞・作曲/甲本ヒロト
言わずもがなのブルーハーツの人気曲。
ヒロトらしい背中を押してくれるメッセージが満載です。
夕暮れが僕のドアを ノックする頃に あなたをギュっと 抱きたくなってる
という一節が、印象的で胸を打ちますね。
ライブ版では大幅にアレンジが変わっており、唸るようなギターが最高。
パーティ
作詞・作曲/甲本ヒロト
感動するような深い歌詞というわけではないですが、パーティの繰り返しがどうにも楽しい気分にさせてくれますね。
夕暮れ以外のヒロト曲は、愉快なタッチの曲が多いなあという印象。
マーシーが思いっきりノスタルジックな方向に振れている分、ヒロトがポップなニュアンスを出すことで、バランスが取れているところはありますよね。
チャンス
作詞・作曲/真島昌利
アルバムの終わりにピッタリとハマるマーシー曲。
気持ちの良いアコギ音にハーモニカが絡み、心地よさが最高です。
個人的にも思い入れが深い曲で、ギターを始めた際、最初に練習した曲が『チャンス』だったんですよね。
ものすごく簡単なコード進行なので、初心者の練習にはうってつけで、最初にAを弾けた時にどれだけ感動したことか。
「チャンスはふと降ってくるんだよ」というメッセージが込められており、諦めないことの大切さを伝えてくれますね。
因みに「イタリアあたり旅してるあいつ」というのは、初期ブルーハーツでTシャツやジャケットをデザインしてた、杉浦逸夫さんのこと。
「【アルバムレビュー】DUG OUT/THE BLUE HEARTS」まとめ
ブルーハーツ後期の大名盤、『DUG OUT』の紹介でした。
どちらかと言うと、一般的には早いテンポの『STICK OUT』の方が人気でしょうけども、僕はこれらのアルバムは二つで一つであり、優劣なんて付けれません。
改めて聴いて思うのは、やはりスローテンポなマーシー曲のクオリティのすざまじさ。
マーシーの歌詞の良さが一番出るのは、やはりノスタルジックな方向に行ったときと、思うところであり、そういった意味で本作のマーシー曲は、まさに詩人マーシーを体現しています。
そしてブルーハーツは次作『PAN』がラストアルバムとなるわけですが、内容はビートルズのホワイトアルバム同様、個人個人の作品の持ち寄り。
実質的な意味では、『DUG OUT』が最後のブルーハーツのアルバムと言えます。
『PAN』も勿論良いアルバムではあるのですが、ブルーハーツとしての最後の作品として、『STICK OUT』、『DUG OUT』はセットできちんと聴いてもらいたいですね。