ザ・バンドにハマってた流れから、ボブ・ディランをもう少し掘り下げたくなり、自伝を手に取りました。
今やノーベル賞も受賞し、全世界が認める偉大な詩人である彼が、満を持して筆を取った書。
とはいえ、後述するが一般的な自伝の形式とは異なり、一癖二癖ある構成になっているのがまたディランらしく、そうした部分がまた面白いところ。
ディランについては、初期~エレキ化あたりの代表的な曲くらいしか知らない自分であっても思う存分楽しめる内容でしたね。
- ボブ・ディランが好き
- ロック史に興味がある
- 天才がどのような道を辿って来たのか知りたい
という方は、間違いなく楽しめる良書であると言えるので、ぜひ手に取って頂けると嬉しい限りです。
ボブ・ディラン自伝
あらすじ
「自伝」とあるように、自身の過去を振り返ったものであるのには間違いないが、標準的な形式とは一線を画した内容。
というのも、全部で5章あるものの時系列や表面的なつながりが無いエピソードを、5つかいつまんでそれぞれの章で書き上げている格好です。
つながりが無いとは言ったものの、ディラン自身の中ではつながりがあり、そうした文章中からは出てこない部分に思考を巡らせることができる、ある種の難解さは存在。
ただ、各章ごとを読んでいく限りは、エピソードでひとまとめになっているので非常に読みやすいですね。
全5章は次のタイトルとなっており、章ごとのあらすじは次の通り。
- 第1章 初めの一歩 デビュー直前のニューヨークでの出来事
- 第2章 失われた土地 アマチュア時代のニューヨーク
- 第3章 新しい夜明け 隠遁時代
- 第4章 オー・マーシー アルバム『オー・マーシー』のレコーディング
- 第5章 氷の川 デビューに近づきつつある頃にニューヨーク
ざっとエピソードごとの年代は書いたものの、実際は様々なところで古い記憶の描写も入って来るので、そうした意味では各章に共通したものがあるのかも知れないです。
特徴・感想
初めてディラン自身により書かれた本
自伝内の隠遁時代の章でも語られているように、とにかく人々から代弁者として崇められるのにうんざりしていたディラン。
それこそ60年代にこんな自伝なんて出していたら、さらに祭り上げられる事態になっていたでしょうし、過度に混沌とした時代が落ち着いて来たタイミングだからこそ出せたものなのかなと。(アメリカでの初版は2004年)
斬新な構成ではありますが、深く内面に腰を下ろした内容であり、加えて圧倒的な文章表現の上手さも光ります。
とくに情景描写が巧みであり、眼前に絵が見えて来るような言葉に惚れ惚れとしてしまいますね。
謎に包まれていた行動の意図が分かる
ディランと言えば謎めいた言動や変化で注目を浴びることもあったりしますが、例えば一例を挙げるとアルバム『ナッシュヴィル・スカイライン』で急激に歌い方を変えるなど。
あと近年のライブだと、昔の曲をほとんど原型を留めてないほどアレンジしてて、英語の分からない日本人だと、何の曲か分からない状態に陥るほど。(僕が2016年にライブを見た際、まさにこの状態になりました。笑)
そうした一見突拍子も無い、自由気ままな変容が、ちゃんと理由があって行われていることが本人の口から語られています。
表立って語られて来なかったディランの考え方がよく分かりますので、気になる方は読んでみるべきでしょう。
詩作が徹底的な学びの積み重ねで培われて来ていた
ディランと言うと、「生まれながらの天才」的なイメージが強いですが、膨大な量の学びを得て来たことが自伝内で明かされています。
そのジャンルも詩集から伝記書、はたまた新聞まで、その範囲は実に広範に及ぶほど。
さらにロバート・ジョンソンの詩作に衝撃を受け、紙に歌詞を書き写して構成をひたすら分析したことまで明かされています。
楽器の上達の上でコピーは欠かせないものでありますが、同じく詩もインプットして分析することで高めることができるというのが、自分にとって一番本書を読んで良かったと感じた価値だと思うところ。
自分もブログを書いているのは、言葉を考えるトレーニングの一環なのですが、改めてもう少し文学を読むことに時間を割いて行こうと感じましたね。
「【音楽本レビュー】ボブ・ディラン自伝」まとめ
ということで以上、ボブ・ディラン自伝のレビューでした。
もちろんディランの曲は好きなので、エピソードを楽しむという上でも読んで良かったのですが、やはり詩作の学びをどう積み上げて来たのか見えたのが、一番興味深ったところでありました。
上達の基本は模倣にありなので、自分も好きな曲を書き起こして分析などしてみようかと思います。
最後にクリエイター視点の方向に話が逸れて行っちゃった感がありますが、無論ディラン好きの方は必見の自伝ですので是非に。
ちなみに第一弾と銘打たれており、続編が予定されているそうですが、2020年5月現在未だに発売されてないので、気長に待ちましょう・・・。
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