スズキサトシ(@sasa_rhythm)です!
僕にとって非常に思い入れ深いのが、この5thアルバム『Oi! um bobo』。
なぜかと言うと、14歳の時にヒロトマーシーに出会ってから約5年、初めてライブを見に行ったのが、同アルバムのツアーだったから。
今までCDやDVDでしか見たり聞いたりできなかった人物が、目の前にいるということは、本当に不思議で感動を超えた、得も言えぬ境地に達したのをよく覚えています。
とはいえ、アルバムが素晴らしい名盤であるかと言われれば、なんとも言えないところ。
アルバム全体のクオリティとしては、正直前作『MONDO ROCCIA』の方が高く、同アルバムはところどころ光る曲はあるものの、パッとしないのは否めません。
2006年の活動開始から、毎年アルバムを出し続け、早5枚目のアルバムとなるクロマニヨンズ。
この活動ペースは他のアーティストと比べても、かなりのハイペースであり、ひとえにヒロトマーシーの尋常ではない作曲量に裏付けされています。
次作ではソングライターの2人が爆発し、クロマニヨンズ史上最高傑作と呼ばれる名盤『ACE ROCKER』を産み出しました。
そこにたどり着くまでの軌跡として、辿っておきたい『Oi! um bobo』ですね。
Oi! um bobo /ザ・クロマニヨンズ 楽曲解説
オートバイと皮ジャンパーとカレー
作詞・作曲/真島昌利
マーシーが大好きなものを単純に並べた歌。
過去にもソロ作品で「オートバイ」や「カレーライスにゃかなわない」などが発表されてますね。
曲調としてはスタンダードな8ビートのロックナンバー。
分かりやすいリフという特徴はあり、シングルカットまでされているものの、そんなに良い曲とは正直言えないところ。
これが良さでもあるのですが、平易な言葉が目立ちすぎている感じがしますよねえ。
伝書鳩
作詞・作曲/甲本ヒロト
深い意味がありそうな歌詞なのですが、はっきりせずといった感じの歌。
曲調的にはマイナーな感じで、独特な雰囲気を出しています。
ハーモニカとギターの掛け合いのソロの感じもカッコイイですね。
これまでクロマニヨンズには無かったタイプの曲調として、目立つ曲だと感じます。
あったかい
作詞・作曲/真島昌利
一番好きな季節は夏で、冬が得意ではないマーシーらしい一曲。
単純に「あったかくて嬉しい」と言ってるだけの曲ですが(笑)
あったかい あったかい あったかい~な
といった感じで、まさに教育番組のような様相。
『FIRE AGE』以降、マーシーらしさの見える曲が少ないと常々感じます。
底なしブルー
作詞・作曲/甲本ヒロト
ヒロトのハーモニカが映える、アルバム随一の名曲の一つ。
ここまでギターソロらしいソロが無かったので、そこも聴きどころ。
ブルースのシンガー&ハーピストとして有名な『サニー・ボーイ・ウィリアムソン』について歌っており、ブルース大好きヒロトらしいです。
手のひらに 底なしブルー 唇に 底なしブルー
という歌詞がありますが、まさにサニーボーイの太いハーモニカサウンドを体現するかのような表現であり、珠玉の言葉と言えますね。
キャデラック
作詞・作曲/甲本ヒロト
世界を代表する高級車ブランドのキャデラック。
ヒロトマーシーの世代は特に車への憧れが強い世代で、「アメ車=カッコイイ」という共通認識がありますよね。
「タンタンタンタタンタン」というよくある感じのリズムアレンジが目立ちます。
合間に挟む低音のギターサウンドも特徴的で、車っぽさを出そうと、妙にアレンジが凝っているのが分かりますね。
多摩川ビール
作詞・作曲/真島昌利
多摩近郊で青春時代を過ごしたマーシーは、ソロ時代にも「夕焼け多摩川」といった曲を発表していたり、地域ネタの曲はよく作りますね。
アコギ弾き語りから曲が始まり、目立ったエレキサウンドが入ってない感じも曲の雰囲気にピッタリです。
優し気なハーモニカサウンドも聴き心地が良く、同アルバムのマーシー曲では個人的に一番好き。
ひらきっぱなし
作詞・作曲/真島昌利
タイトルの「ひらきっぱなし」とは、目がひらきっぱなし、という意味でしょうね。
8ビート一辺倒で突き抜ける感じの曲で、ソロも無くて、まさに目を開いてたら一瞬で終わるかのよう。
最後にスペインの歴史的建造物「サグラダファミリア」が出てくるあたり、マーシーの文学性が垣間見えるところ。
止まらない様を「サグラダファミリア」とかけるのは流石ですね。
7月4日の横田基地
作詞・作曲/真島昌利
ブレイカーズ後期、福生の米軍ハウスで暮らしていたマーシー。
福生には「アメリカ空軍横田基地」があり、定期的に一般開放のイベントが開かれ、その思い出について歌ってます。
現在は毎年9月に「日米友好祭」として開催されてますが、おそらくマーシーが住んでいた時は7月4日だったのでしょう。
滑走路に陽炎立ち シェビー’57 歌うビッグママ
といったリアルな情景が浮かぶ歌詞がたまりませんねえ。
ボンジュール ロマンマン
作詞・作曲/甲本ヒロト
イマイチ「ロマンマン」がなんのことなのか分かりませんが、泣けるメロディラインが秀逸なんですよねえ。
うなづいてる 僕の心が 『つれてって』 ロマンマン ロマンマン ボンジュール
というサビが最高。
ギターも小技というより、ジャーンと鳴らすだけというのが、カッコイイですね。
いきもののかん
作詞・作曲/真島昌利
マイナー調な一曲で、ベースラインが超絶カッコイイのが特徴。
楽器を弾くようになってから始めて同曲をちゃんと聞いた気がしますが、このベースは弾きたくなりますね(笑)
人間だって所詮「生き物」であり、信じられるのは「生き物の勘」である、という主張は、まさにマーシーらしい側面を感じます。
陽に焼けた蟻と 遊んだ夏の日 蛹が風に揺れる いきている
という部分が、マーシーっぽい文学感満載。
我が心のアナーキー
作詞・作曲/甲本ヒロト
「アナーキー」と言えば、セックス・ピストルズの代表曲「アナーキー・イン・ザ・UK」ですが、それとは対照的なゆったりした曲。
「アナーキー」を憧れそのものとして捉えてるように思え、パンクが大好きなヒロトらしい歌詞が魅力ですね。
感動的なメロディでゆったりと「アナーキー」と歌うのは唯一無二。
南南西に進路をとれ
作詞・作曲/甲本ヒロト
同アルバム、というかクロマニヨンズで一番浮いてる感じの一曲ですが、同アルバムでは一番好きな一曲。
鼓笛隊のようなリズムで、楽し気な歌詞を歌われると、妙に楽しくなりますねえ。
ひと晩で 使いっきりのカラダ もしも土曜日が ふたつあれば ふたつあれば オートバイ 一番好きな場所へ 永遠なんだぜ 無限じゃない 永遠だぜ
という出だしから素晴らしく、「土曜日がふたつあれば」という表現が珠玉。
当時のツアーでは、アンコールのラストで演奏され、ヒロトが大太鼓を演奏するので大盛り上がりでした。
他のツアーで演奏されることはまず無いような曲なので、もう聞けないと思うと非常に残念。
「【アルバムレビュー】Oi! um boboザ・クロマニヨンズ」まとめ
良い意味でも悪い意味でも彩りが多い『Oi! um bobo』。
終わり良ければ全て良しということで、最初は「うーん」となっていても、ラストの「南南西に進路を取れ」を聴くと、妙に良いアルバムに感じてくるのは不思議(笑)
とはいえ、冷静にアルバム全体を俯瞰すると1st『ザ・クロマニヨンズ』や前作『MONDO ROCCIA』の方がクオリティの高いアルバムと言えます。
1~5thと通して聴くと、勢いが無くなって来たかな?と感じる方が多いのですが、心配無用。
先にも申し上げてるように、次作『ACE ROCKER』はまさにロック史に残る名盤なんです。
改めてヒロトとマーシーが30年経っても何も変わっていないことを感じさせてくれるところ。
名盤に続く階段という意味でも重要な『Oi! um bobo』。
色んな面で楽しめる一枚にはなっているので、ぜひ手に取ってもらいたいですね。