スズキサトシ(@sasa_rhythm)です!
ヒロト&マーシーのバンドは、これまでブルーハーツ、ハイロウズ、クロマニヨンズと変わってきていますが、それぞれのバンドの色はファーストアルバムを聴くとよく分かるものです。
今回はバンドの特色というのを踏まえながら、ファーストアルバム『ザ・クロマニヨンズ』について紹介していきましょう。
クロマニヨンズが産声を上げたのは2006年、ハイロウズ解散からわずか8か月後のことでした。
7月に初めてのライブがあり、アルバムは10月に発売。
本アルバムはなんと言っても「そぎ落とされたシンプルさ」というのが目立ちます。
というのもハイロウズがキーボードありきで結成されたというのもあり、後期に白井さん(key)が脱退した時の音の物足りなさというのは、誰が聴いても感じるところでした。
ハイロウズのメンバーはマーシーが集め、マーシーが解散の意向を出したのは周知の事実ですが、どう考えても白井さんがいなくなったことが要因でしょう。
それゆえクロマニヨンズ結成にあたっては、最初から4人組のシンプルなロックバンドということに重きを置き、サウンドもシンプルになっていると解釈するのがすんなりします。
基本的に彼らのファーストアルバムはいわゆる外さない名盤であり、例に漏れず『ザ・クロマニヨンズ』も良いアルバムです。
では楽曲紹介をしていきますね。
ザ・クロマニヨンズ/ザ・クロマニヨンズ 楽曲解説
キラービー
作詞・作曲/真島昌利
クロマニヨンズの方向性を決定付けるかのような、余計な言葉をそぎ落としたシンプルな曲。
曲も短いし歌詞も短いしで、純粋にバンドサウンドを楽しんでいるだけ、という印象を受けます。
ハイロウズ初期の場合は意図的に意味の無い歌詞を付けていましたが、クロマニヨンズになってからは「自然な」意味の無い歌詞と捉えることができます。
まるで意味の無い歌詞が出てくることが、長い経験の中で必然であったかのような。
エレキギター
作詞・作曲/真島昌利
75年にマーシーが初めてエレキギターを手にした時の感動を、ただそのまま歌にした感じの一曲。
マーシーが思い出を歌にする場合は、やはりノスタルジックな歌詞のフォーク調が最高なのですが、これはまるで逆方向ですね。
ただシンプルなギターサウンドだからこそ、伝わるものがあるのも確かです。
連結器よ永遠に
作詞・作曲/甲本ヒロト
ヒロト作の圧倒的な下ネタソング。
「電車の連結器」と「性的な事象」をかけています。
過去にも露骨な曲と言えば、ハイロウズ時代の『ビッグ・マシン』なんかがヒロトの曲。
思えば『ビッグ・マシン』もファーストの収録であり、ファーストアルバム時はこういった曲を作りたくなるんでしょうかね(笑)
今でも度々ライブで演奏される曲であり、ヒロトのそれっぽい手使いが見どころです(^_^;)
グレート
作詞・作曲/甲本ヒロト
イマイチ意味が分からない曲ですが、なにか背中を押してくれるような印象を受けるのも確か。
グズグズしてたら 大人になっちまう 今すぐルール 破りたくなる
という後半サビ前の歌詞がとくにヒロトらしく、大好きな一節です。
「少年の大人に対する反抗」という、ブルーハーツ初期に頻出したテーマの楽曲と、どこか同じ匂いを感じます。
やわらかい
作詞・作曲/真島昌利
ほとんど歌詞に意味が無いうえ、サビも「やわらかい」と繰り返すだけなのに、猛烈に泣けてくる曲。
いかにもマーシーらしい心に響くメロディラインが、そう感じさせる所以でしょう。
「やわらかい」は何を指すのかが、この短い歌詞の中では到底判断できませんが、「教室の窓が鳴る」といったマーシーらしい文学表現がたまりませんね。
あさくらさんしょ
作詞・作曲/真島昌利
クロマニヨンズのファーストでは一番好きな曲。
これぞマーシーといった文学的な歌詞が、心を熱くしてくれますね。
わかったんじゃない 思い出したんだ さんしょの木 植え変える 一人 よろこび
というサビの歌詞が最高ですね。
タイトルは『あさくらさんしょ』ですが、これは「朝倉山椒」という山椒の種類を指しているのは確か。
おそらくですが、マーシー自身が「朝倉山椒」を自宅栽培していたか、誰かの家や、TV・映画などで見たといったところから、その印象や思い出を歌にしているように思えます。
そう考えると全ての歌詞に説明が付き、指揮棒というのも、植物を栽培する際に真っすぐ成長するように突き刺す棒、のことを言っていると考えると、すんなり理解可能。
いずれにしても「朝倉山椒」からこのような歌を作り上げるのは、本当に才能としか説明のしようがありません。
草原の輝き
作詞・作曲/真島昌利
アルバムの中ではミドルテンポでやや毛色が違う曲であり、これからB面に移り変わるというのを感じさせてくれます。
歌詞は本当に意味が無いもので、言葉が乗っていればなんでもいいんじゃないかという雰囲気も。
ヒロトのブルースハープ含め、楽器全体の調和感が強い曲のため、今でもライブのリハーサルでよく演奏されています。
ライブで披露することはごく僅かですがね(^_^;)
歩くチブ
作詞・作曲/甲本ヒロト
アルバム中2つ目の下ネタソング。
『連結器よ永遠に』と比べると、『歩くチブ』の方がおふざけ曲的な感じがあります。
「恥部」とは「恥ずかしい部分」という意味であり、歌の中で何度も連呼するのです(笑)
現在でもごくまれにライブで演奏されることがありますが、非常に盛り上がる一曲ですね。
ネガチブ ポジチブ ネイチブ プリミチブ
といったヒロトらしい言葉遊びも魅力的。
くじらなわ
作詞・作曲/真島昌利
まるでNH●のみんなの歌で流れてきても違和感の無い、子供向けっぽい一曲。
クロマニヨンズ以前には無かったような曲ですので、「歌詞の意味の無さ」すらも通り越した境地に達しているようにも思えます。
この曲以外でもそうですが、クロマニヨンズになってからやたらと「オイ」が多用されるようになり、「コール&レスポンス」色が強まっているのが特徴。
それ故にCDではピンと来なくても、ライブ映えする曲が多いのでしょうね。
夢のロッケンロールドリーム
作詞・作曲/甲本ヒロト
同アルバムのヒロト曲では、『タリホー』と甲乙つけ難い珠玉の名曲。
タイトルにもあるように「ロックンロール」について歌われており、スローなバラードで歌われる「ロックンロールの不変さ」は、涙無しには聞けません。
神様が作ったものは いつか壊れてしまうものばっかり ロッケンロール 関係ねえ
という一節が全てを物語っており、「人間も含め、世の中全ての物は壊れてしまうものばかり、だけどもロックンロールは不滅」というメッセージがひしひしと伝わってきます。
クロマニヨンズが基本的に8ビートの曲主体のため、最初のツアー以降はライブでも取り上げられてないのが残念。
いつか聴いてみたいクロマニヨンズの曲のひとつですね。
くま
作詞・作曲/甲本ヒロト
『夢のロックンロールドリーム』が感動の一曲だったのに一転、またおふざけ曲的な方面に戻ってしまいます(^_^;)
タイトルにもあるように、テーマは「くま」のようですが、先の『くじらなわ』同様に、子供向けソングでもおかしくないような、いわゆる「可愛いくま」について歌われているのが特徴。
クロマニヨンズらしい幼稚さが見え隠れする一曲ですね。
タリホー
作詞・作曲/甲本ヒロト
記念すべきクロマニヨンズのファーストシングル。
シングル版とはコーラスなどのごく一部のアレンジが違います。
歌詞は直接的なものではなく、いわゆる人によって捉え方が違う感じですが、そこが良い味を出していると感じるところ。
形は変わる 自分のままで あの時僕は ああだった
という一節が大好きで、「自分は自分のままだけでも、色んな経験や学びを通して形は変わっていく」というメッセージが最高ですね。
単に「成長」という単語で片付けられそうなところではありますが、常人には思いつかない表現をするところは、天賦の才能。
肝心の「タリホー」の意味がはっきりしないですが、それがいいんですよね。
あやふやだからこそ感じるものがあるのです。
まーまーまー
作詞・作曲/真島昌利
言葉数は少ないものの、マーシーらしい幻想的な言葉が見え隠れする一曲。
「星が流れる~月が満ちてく」のくだりが非常に美しく、自然を表現する言葉の豊かさが感じられますね。
ラモーンズ調のシンプルなパワーコードのリフで、典型的なパンクサウンドに仕上がってますが、案外弾き語りでもしっくり来そう。
土星にやさしく
作詞・作曲/甲本ヒロト
アルバムを締めくくる一曲ですが、24時間テレビを皮肉ったかのようなパロディ的な珍しいタイプの曲。
24時間テレビと言えば「愛は地球を救う」というキャッチフレーズが定番ですが、歌詞中で「愛は土星を救う」と歌っており、まさにそのまんま(笑)
直接的な歌詞は無いですが、暗に「愛は地球を救うと言ってるけれど、土星を救うって言ってるくらい滑稽なことだ」と言いたいのでは無いでしょうか。
ブルーハーツの頃はマーシー作のチェルノブイリなど社会批判的な曲はよくありましたが、クロマニヨンズで久々の社会批判ソングは嬉しいところ。
ただ歌詞中で明確に表現しないところが、昔と比べて彼らの心境が変化してきたということの現れにもなるのかな、と思いますね。
「【アルバムレビュー】ザ・クロマニヨンズ/ザ・クロマニヨンズ」まとめ
クロマニヨンズのファーストアルバムについて紹介してきました。
クロマニヨンズのアルバムでは随一と言える各楽曲の短さが特徴の一つであり、全14曲中、半分の7曲が3分以下という、ラモーンズもびっくりの短さです(笑)
それゆえにとてつもない疾走感を放っているのは事実。
ブルーハーツ、ハイロウズ、クロマニヨンズ、全てのファーストアルバムに共通して言えるのは、疾走感ではないかと感じるところ。
時代やメッセージが変わっても、ここだけが一緒なのは、ヒロトとマーシーが、タリホーで言うところの「自分のままで形が変わってる」ということではないでしょうか。
そんな変わっていないヒロトとマーシーを感じることができる、ファースト『ザ・クロマニヨンズ』。
ぜひ自分の耳で彼らの不変性を感じて頂けたらと思います。