スズキサトシ(@sasa_rhythm)です!
ヒロトマーシーがロックンロールのルーツミュージックに強い影響を受けていることは周知の事実ですが、ブルーハーツがそうであったように、パンクからも色濃い影響があります。
一括りにパンクという枠にはめられないバンドな気がしますが、今回は『トム・ロビンソン・バンド』というパンク期のバンドを紹介しましょう。
そもそもパンクロックとは、というところをざっと説明しますと、70年代半ばにアメリカでパンクが産まれ、それがイギリスに渡り影響を受けたバンドが次々と出てくる、と言ったところ。
代表的なところに「セックス・ピストルズ」「クラッシュ」「ダムド」などなど。
そんなパンクムーブメントの隆盛を目の当たりにして、フォークから転身してパンクを始めた人物こそが、『トム・ロビンソン』なんです。
またトムはゲイとしても知られる人物。
過去にはそれが原因で苦しみ、自殺まで図ったほどですが、紆余曲折を経て、音楽の道に進むことになります。
70年代ではタブーとされていたゲイを公言し、あらゆる差別への怒りを歌うトムは、他のパンクバンドとは一線を画し一躍話題に。
シングル『2-4-6-8 moterway』でデビューし、全英トップ5入りする大ヒットを飛ばしたのでした。
その後、今回紹介する『power in the darkness』と2nd『TRB two』を発売し、メンバー間の不仲により解散、というのが簡単なトムロビンソンバンドの経歴。
苦しい時期もありながらも、その後もソロ活動など、音楽は続けていたトム。
そして話は変わり、実は1996年に、ハイロウズがトムを招聘して一緒にライブをしています。
Youtubeで見たことがある人も多いと思うのですが、その映像作品こそが『ザ・ハイロウズのホリデイズ・イン・ザ・サン』。
ラストにトムがカバーしたボブ・ディランの名曲『I shall be lleased』を演奏するのですが、これが涙無しには見れない名演。
DVDについて語り出すと長くなるので、気になる方はぜひ自分の目で確かめてみてください。
ということで前置きが長くなりましたが、アルバム『power in the darkness』を紹介していきましょう!
power in the darkness 楽曲解説
2-4-6-8 MOTORWAY
作詞・作曲/トム・ロビンソン
シンプルイズベストと言わんばかりの、3コードのロックナンバー。
軽快な語感といい、すざまじいキャッチーさを聴くたびに感じます。
「長距離トラックの運転手」をテーマにした一曲で、いわゆる労働者階級の応援歌と言ったところ。
差別への反旗、自由を求める姿勢など、トムのメッセージは常に弱者に寄り添うもので、まさに他のミュージシャンには無い着眼点が流石と言えます。
先にも書きましたが、同曲がシングルカットされ、大ヒットを巻き起こし、一躍バンドの知名度を上げました。
当時日本でもよくラジオでかかっていたそうで、トムは知らなくてもこの曲は知ってる人が多いそう。
この曲に限らずですが、ギター『ダニー・カストウ』のレスポールが滅茶苦茶に良い音を鳴らすんですよねえ。
UP AGAINST THE WALL
作詞・作曲/トム・ロビンソン
これもシンプルなのにすごく良い曲なんですよねえ。
残念なことに日本でトムはマイナーな存在なので、和訳歌詞もほとんど無いのが現状。
英語ができない僕の思いっきりの意訳では、タイトルは「壁を登れ」、といったところでしょうか。
ここで言うところの壁は、もちろん人生などにおいてぶち当たるという壁の意。
「困難を乗り越えろ」と言わんばかりの、トムの熱い叫びがたまりません。
この曲を聴くとよく分かりますが、初代ドラマー「ドルフィン・テイラー」はとんでもなく上手いです。
GREY CORTINA
作詞・作曲/トム・ロビンソン
ストレートなロックナンバーが2曲続いたところで、マイナー調の趣向の違う曲が登場。
タイトルにある「コルティナ」とは、イギリスの一般的な乗用車で、「灰色のコルティナ」と言ったところ。
カッティングから曲が始まるところが、オシャレな感じでカッコイイですね。
車のエンジン音がフューチャリングされてるのも秀逸。
TOO GOOD TO BE TRUE
作詞・作曲/トム・ロビンソン
またもマイナー調な一曲。
タイトルは「現実にしてはできすぎている」といった感じの意味です。
キーボードとベース音が映えるアレンジが秀逸。
唸るようなギターソロもカッコよく、改めてカストウが同時期のパンクのギタリストと比べて、秀でた技術を持っていたのがよく分かります。
AIN’T GONNA TAKE IT
作詞・作曲/トム・ロビンソン
またまたポップなロックチューンの登場。
トムのメロディセンスの高さを改めて感じます。
サビで全員がコーラスする部分が気持ち良いんですよねえ。
LONG HOT SUMMER
作詞・作曲/トム・ロビンソン
そのまんま「長く暑い夏」といった意味のタイトルですが、何かで読んだ記憶がありますが、たしかゲイソングだったはず。
レゲエ要素も感じさせるようなアレンジが、トムロビンソンバンドの音楽的な幅広さを強く感じさせますね。
THE WINTER OF ’79
作詞・作曲/トム・ロビンソン
B面の始まりにしてハイライトとも言える名曲。
ただジャーンと鳴らしてるだけなのに、なぜこんなにカッコいいイントロになるのでしょうか。
タイトルは79年の冬、といった具合ですが、アルバムが発売したのは1978年。
「1979年の冬に何かが起きる」といった歌なのでしょうか。
この曲、ライブデモビデオがあるんですが、尋常ではないカッコよさ。
レスポールが唸ってるとは、まさにこのことですよね~。
MAN YOU NEVER SAW
作詞・作曲/トム・ロビンソン
疾走感溢れるナンバー。
裏から入ってくるリズムパターンも入ってたり、音楽的にハイレベルであったことがよく分かります。
売れたとか、後発だったとかはともかくとして、少なくとも演奏レベルにおいては特に秀でたパンクバンドであったことが理解できますね。
BETTER DECIDE WHICH SIDE YOU’RE ON
作詞・作曲/トム・ロビンソン
レゲエ要素が入ったダンスナンバー。
シンプルな曲をやったかと思いきや、全く毛色の違う曲を入れてきたり、懐の広さがすざまじい。
往々にしてパンクのギタリストは、一辺倒でしか弾けないことが多いですが、カストウはなんでも来いという状態。
どんなアレンジでも完璧に弾きこなすところに、圧倒的なレベルの高さを感じざるを得ません。
YOU GOTTA SURVIVE
作詞・作曲/トム・ロビンソン
カッティングが映えるクールな一曲。
リフもオシャレな感じで、アレンジ能力の高さを感じます。
バッキングもカッティング主体で、完ぺきに弾きこなす様が至高。
トムの吐き捨てるような歌い方も良いですね。
POWER IN THE DARKNESS
作詞・作曲/トム・ロビンソン
同アルバムのタイトルになっている一曲。
「暗闇の中に力はある」と叫び、徹底的にマイノリティを支える姿勢を持つ、まさにトムを体現する一曲だと思います。
歌の中でしきりに「自由」について歌われ、「フーリガン」「娼婦」「同性愛者」「ユダヤ人」など、差別的な扱いをされる人々に、自由を求めよと訴える姿勢がたまりません。
こうした社会的弱者に寄り添う姿勢が、まさに唯一無二のパンクバンドだったと言えるところであり、トムという人間の優しさを感じるところです。
「【アルバムレビュー】Power In The Darkness/トム・ロビンソン・バンド(TOM ROBINSON BAND)」まとめ
以上、名盤『Power In The Darkness』の紹介でした。
改めて聴くと、とんでもない名作で、まさに捨て曲無しのアルバムと言えます。
今回は再発版のCDを下に貼ってますが、曲順はあくまでオリジナルのアナログに沿って紹介しました。
CD版は曲順が違うんですよ。
冒頭にも紹介した『I shall be lleased』は本CDにも収録されていますが、実はアナログ版とは違うんですよね。
権利関係の問題かもしれませんが、原曲には無い、トムがオリジナルで付けたCメロ部分が、CD版では丸々カット。
あの部分があってこそ、トムロビンソンの『I shall be lleased』なので、できればアナログのシングルを入手して聴いてもらいたいところ。
僕にとってトムは洋楽の扉を開いてくれた人で、初めて聴いた洋楽が、トムロビンソンだったんですよね。
もちろんハイロウズのDVDの影響ですが。
「トム無くして洋楽を楽しめるようになった自分はあらず」ということで、本当に特別な存在。
残念ながら現代においては知名度も低く、来日公演なんてまず無いでしょうから、一度でいいからイギリスに行ってトムを見るのが夢の一つです。
最後に、配信でも良ければ『amazon music umlimited』で、トム・ロビンソン・バンドの作品は全曲聴けます。
無料で試せますので、気になる人は使ってみてくださいね。
詳しくはこちらの記事を参考にどうぞ。
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